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パリ同時多発テロを戦争へと誘導する未確認情報の不気味
このIS声明では、ISが実行したという決め手にならない。オランド大統領は「ISによる戦争行為」を宣言しても、事件とISの関係について決め手となるような材料が示されたわけではない。にもかかわらず、大統領の宣言を受けて、フランス軍は14日からイスラム国への報復的な空爆を開始した。
現場で発見されたシリア旅券を巡る疑問
その前後に、自爆した犯人の近くから、シリアのパスポートのパスポートが見つかったという報道が出てきた。後から捜査当局筋の情報として、そのパスポートの指紋や写真が名前のものと一致せず、真正の旅券ではない可能性があるという報道も出ている。
そもそもシリア人の自爆犯が偽のパスポートを持って攻撃に出るだろうか。イラクやシリアという国境も認めず、シリア政府も認めないISの戦士が、身分証明書であるパスポートを死ぬ時に身に着けるだろうか。私たちは「自爆テロ」と呼ぶが、本人たちにとっては「神の敵を倒すジハード(聖戦)のために命を捧げる殉教作戦」である。神のもとに旅立とうとするものが、パスポートを身に着けていくだろうか。それも偽物のパスポートを。
自爆者の遺書から見えた「殉教者」像
イスラムの「自爆者(殉教者)」については、日本でも欧米でも、余りにも知られていない。私も、当初、自爆者というものが理解できず、パレスチナに行くようになって、自爆をした若者の家族を何家族も取材した。若者が残した遺書を見せてもらったことがあるし、自爆未遂で負傷した若者にインタビューしたこともある。
自爆したある若者は「同胞たち」と「両親」への遺書を残した。同胞たちに向けては、「私は不帰の旅路に出ることを決めました。この、虫の羽ほどの価値もなく、影のように消えてしまう、楽しみの少ない世界に戻ることはないでしょう」と書いていた。遺書の中に政治的な主張がほとんどないのに、驚いた。逆に、「神よ。私は私の魂と体を差し出すことに戸惑いはありません。神がそれを受け入れることを祈念します」などと、宗教色が非常に強く、遺書を読んでいると、すでに現世を離れて、別世界に入り込んでいるようにさえ感じた。
「殉教者をつくるのに3か月かかる」
銃を乱射して人間を無差別に殺戮し、その後で自爆するという行為は、すでに常軌を逸している。以前、パレスチナのイスラム過激派を取材していて、「殉教者をつくるには3か月かかる」という話を聞いたことがある。
イスラム過激派のリクルーターは、夜明けの礼拝を行うような敬虔な若者に近づき、徐々に殉教の道へと誘導していくという。普通、若者は宗教への関心は薄いが、イスラエルの攻撃などで身近な人間が死んだり、破壊の後を見たりして、ひどく傷つくと、思いつめて未明に起き出し、早朝の礼拝に参加するようになるという。
殉教者に仕立てる殺し文句は、「あなたは神に選ばれたものである」という言葉だ。先に紹介した自爆した若者の遺書にも両親あての遺書に「私は殉教者としての地位を神に与えられました」というくだりがある。「殉教者をつくるのに3か月かかる」というのは、自爆者が自分を「殉教者として神に選ばれた」と考えるようになるまでの期間であろう。
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