コラム

ロックダウン大幅緩和でイギリスはお祭り気分

2021年04月28日(水)11時00分

ロックダウンが大幅に緩和された4月24日、ロンドン・ソーホー地区の繁華街に繰り出す人々 Toby Melville-REUTERS

<屋外のパブでは早い時間から人々が酔っ払い、店はクリスマス商戦さながらの混雑。人間のえさをあさりにしばらく姿を見なかったカモメまで復活>

イギリスでは4月12日、ロックダウン(都市封鎖)が大幅に緩和された。美容室や店が営業を再開。パブは屋外営業が可能になり、ビアガーデンや、もしくは通りに椅子を置くだけの席でもOKになった。

僕の町では、月曜日だというのに土曜日みたいに大勢の人が買い物に繰り出した。ほとんど誰もが(低価格ファッション店の)プライマークの袋を下げているみたいだったから、僕もちょっと寄ってみることにしたところ、案の定、店の前には長い行列ができていた。これには「ベルベット・ロープ」(VIPだけが入場を許されるセレブ感満載の境界線ロープ)や「サクラ」みたいな効果があって、僕も好奇心にかられ、中に入って何の騒ぎだか確かめたくなった。

多くの人たちが、とても早い時間から酔っ払っていた。屋外席でないといけなかったから、みんな夕方ではなく暖かい午後のうちから集まったせいだ。

もちろん、本当の土曜日になると、お祭り気分が漂ってクリスマス商戦終盤のようなにぎわいだった。積もりに積もった買い物欲が一気に発散されていた。しかも、たまたまこの日は、春としてはしばらくぶりの暖かさで、そういうときは決まって出歩く人が増える。

全く現実離れした考えだが、何か町への立ち入りを制限するシステムを検討すべきだという気がした。確か、ギリシャのアテネでは、市内に入る車をナンバープレートの最後の数字が奇数なら奇数日、偶数なら偶数日......といった具合に制限している。

みんな信じられないほど従順だった

それどころか、いかにもイギリス的な現象が起こった。ほぼ空席の電車をフルに運行していた何カ月ものロックダウン期間を終えて、この最初のショッピング週末には鉄道のメンテナンスが行われた。だから、ガラガラの電車の代わりに「振り替え輸送バス」が数々の小さな町や村から買い物客を町へと運んだ。

ロックダウン期間中のほとんどで、僕の町は大部分がらんとしていて、僕はすっかりそれに慣れていた。僕は町の中心部に住んでいるから、ほとんど町を独り占めしている気分だった。通りで人とすれ違うことなんてめったにないので、誰かとすれ違ったら会釈して挨拶するようになったくらいだ。

その町が「平常」時にはこんなに大勢の人であふれるのかと衝撃だった。以前はそうだったのを覚えてはいるが、こんなにも長いロックダウンの後では違って見えた。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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