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思惑入り乱れる「即決」イギリス総選挙

メイ首相はEU離脱に向けて政治基盤の安定化を図りたいようだが Stefan Wermuth-REUTERS
<6月の総選挙で、保守党は期待したほど議席数を伸ばせないだろう。労働党はボロ負けして、それでもコービンが党首にとどまれば、主流派の議員が分裂して新党を結成するかもしれない>
僕がイギリスに帰国した翌年の2011年、総選挙を5年ごとに行うとの法律が定められた。この法律は、与党が5年「以内」の自党に最も有利な時期に総選挙を行う、という既存のシステムに取って代わることになった。
大体同じころ、僕は「omnicompetent(全権を有する)」という新語を知った。僕の記憶が正しいなら、あるウェブサイトでは、「議会は全権を有しており(omniconpetent)、自身が作ったルールを自ら覆すことができる」というふうに解説していた。
だから、今回「即決」されたイギリス総選挙は、法で定められているものなら何であれ絶対に確かだなどと信じ込むべきではないことを示したよい例だろう。何しろ2011年のこの法律がこれまで唯一効力を発揮したのは、2015年の総選挙の日程を決めるときだけだったのだから。
今回の総選挙前倒しの理由は十分過ぎるくらい明らかだ。まず、保守党は世論調査でこんなにも見事なリードを保っているから、今すぐ選挙をして成果を得たいとの欲求にあらがえないこと。ここまでの優勢は当然ながら、ずっと続くはずがない。
2つ目には、テリーザ・メイは総選挙を経て選ばれた首相ではなく、そのことが彼女への批判につながっていたことだ(実際、彼女は保守党内の党首選すら正式に勝利したとはいえない。対立候補が脱落したから争うことなく党首になった)。総選挙で勝利を収めれば、彼女に正当性が与えられるだろう。
そして3つ目に、メイには総選挙を行うもっともらしい口実がある。メイが進めるブレグジット(イギリスのEU離脱)の交渉プランへの後押しを得て、交渉手続きを前に進めるためだ。
【参考記事】メイ英首相が衝撃の早期解散を決断した理由──EU離脱の政局化は許さない
労働党はボロ負けで分裂?
これは「即決」の総選挙だから、僕も「即席」予想をしてみよう。
保守党は過半数を上回り議席をさらに拡大させるだろうが、彼らが期待するほどの伸びではないだろう。有権者は今のところ保守党をいちばん分別ある選択肢と見ているが、一方で保守党は傲慢と見られているし、あまり広く好かれてもいない。にもかかわらず、彼らは議席数増を有権者からの信任だとみなしてお墨付きを得たと豪語するだろう。
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