コラム

光熱費、電車賃、預金......ぼったくりイギリスの実態

2016年12月08日(木)16時30分

 ある学生が英シェフィールド(そこの学校に通っている)からドイツのベルリンに飛行機で旅行し、それから英エセックス(住んでいる場所)に飛行機で戻ったら、航空運賃は普段の通学にかかる電車賃より安かったという。一応言っておくと、シェフィールドとエセックスはイギリスの端と端に位置しているわけではない。

 さらに来年1月、電車運賃が平均2.3%値上がりすることが発表されている(値上げ幅を決定する当局がある)。そんなにたいした値上げじゃないと思うかもしれないが、元々高い場合、2.3%は大きい。

 たとえばエセックス州コルチェスターからシェフィールドまでにかかる101ポンド(約1万4600円)は、さらに2ポンド値上がりすることになる。これは日本でいえば大宮から名古屋くらいの運行距離。イギリスでこの距離を移動すると日本より2時間は長くかかり(流線型の新幹線でもないし)、それでいて価格は20%も高い(現在のポンド安の状況でも)。

恩恵を手にするのは銀行や大企業

 次は、預金金利だ。イングランド銀行(中央銀行)はブレグジット(イギリスのEU離脱)後に貸出基準金利を0.25%下げた。だが多くの銀行は貯蓄口座の金利を0.5~1.5%引き下げている。僕の「一番お得な」はずだった口座の金利も1月には4%から2%に落ちてしまう。これは彼らのいつものやり方だ。銀行は預金者の金利を攻撃的なまでに下げて「取れるところからならどこからでも取る」。

【参考記事】タブーだった「嘘」という言葉をばらまき始めたイギリス人

 もう1つの例は、ISA(個人貯蓄口座)。預金の金利が非課税になる口座だ(通常なら20%を源泉課税される)。だからたとえば、預金で3%の利子が得られるとき、ISAでは丸ごと3%が手に入るが、普通預金口座では2.4%しか受け取れない。ISAのほうが明らかにお得だ。

 ところが銀行は、たとえば普通預金の金利が3%だとしたら、ISA口座では金利を2.5%、というふうに設定するようになった。それでもまだ普通預金口座よりは「得」だという触れ込みだ。そのおかげで、非課税の恩恵のほとんどを、消費者ではなく銀行が手に入れた。

 加えてあるときから、銀行はさらなる手段に出た。ISAの金利を自社の普通預金口座よりも低く設定するようになった。そうしてもなお、総合的・長期的に見ればISA口座のほうが普通預金口座よりはギリギリ得になるからだ。

 そんなわけで、今となっては将来的な(理論の上では得られるであろう)利益を夢見て、低い金利のISAに泣く泣く甘んじている人々がいる。でなければ、その他の人々はそれすら理解せず、「非課税口座」なんだから、たとえインフレ率よりも低い金利でもお得に違いない、と信じ込んでISAを利用しているようだ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、7日まで海峡封鎖ならイラン 攻撃示唆 

ワールド

不明兵捜索、時間との戦い イランの猛攻耐えた米軍救

ワールド

トランプ氏、イランに合意期限「6日」 米戦闘機乗員

ワールド

米、イランで不明の戦闘機乗員救出 トランプ氏「史上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「攻撃的知能」を解剖する
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 7
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 8
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 9
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story