「障がい差別社会」に移民受け入れの覚悟はあるか?
上記に寄稿された複数の先生方と話す機会に恵まれましたが、私の専門である経済的観点としては、社会的弱者を排除しない、格差や不平等の是正に取り組む必要性を強く掲げるしかない、といった指摘しかできませんでした。多文化共生の課題のなかで避けて通るべき問題ではないとの見解は、分野が違えど共通認識であることを確認しました。
これまたワタクシごとで恐縮ですが、70年代の後半米国の西海岸の小学校に通っていた時代がありまして、アルファベットも書けない、英語など一言も理解できないまま現地の小学校に放り込まれました。今でもそうした手厚いサポートをする余裕が米国にあるのかはわかりませんが(なくなってしまったため極端な格差社会になったのかもしれません)、3人しかいなかった日本人のために特別クラスを毎日午後に設定してくれ、専門の教員を1人付けるなど、外国人への特別な配慮をしてくれたものです。言葉がわからない我々は社会的弱者ですが、その我々にそこまで手厚いサポートをする。
日本が移民を受け入れる場合でも彼らを社会的弱者にしないためにはどうしたらよいのかとの配慮は当然必要です。移民としてやってきた子供たちが教育を受け、日本語が話せるようになるまで、就職できるまで、そして日本国に税金がしっかり納められるようになるまでサポートする必要があり、その社会的コストは移民ではない日本人の何倍にも及びます。そうした負担を引き受ける覚悟や準備が我々に出来ているのか?
既出の平成24年版子ども・子育て白書を見ていただければ、欧州諸国に比べて我が国の家族政策全体への財政的な規模が小さいことがわかります。フランスなどは家族政策に関係する予算が対GDP比で3%台であるのに対して、日本はわずかその1/4。社会保障給付の国際比較をした際に、同じような経済力を持つ各国に比べて日本の社会保障が現状ですら非常に手薄であるのに、これから移民を受け入れた場合にその社会的コストを考慮するまでに至るのかは甚だ疑問です。
社会的弱者の問題で言えば、国際比較からみた日本の貧困は、無職によるものではなくワーキングプアが高いのも特徴で、特に子どもがいる現役ひとり親世帯の貧困率はOECD諸国の中でも断トツの悪さの58.7%。しかも税金や社会保障費などを支払い、児童手当など政府からの給付を受ける前と後(再分配前と再分配後)では日本は再分配後の方が子どものいる世帯の貧困率が増してしまうという、ありえない事態になっているのはもう何年も前からOECDを筆頭に専門家から指摘されている点でもあります。政府の再分配が機能してないままいくら消費税を増税して社会保障にといっても現実味を帯びてはきません。増税ありきで再分配の充実にはほとんど目が向かない実情も消費税に反対する理由の1つです。
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