コラム

賃金格差の解消こそが女性の雇用を後押しする

2015年08月03日(月)16時40分

 ILOでは批准すべき基本条約として「結社の自由」「強制労働」「差別」「児童労働」という4つのテーマを掲げています。それに関わる8つの条約それぞれについて、ILO加盟国の80%~95%が採択をしている中、日本はいまだにこの基本8条約ですら網羅しきれていません。未批准は105号「強制労働の廃止に関する条約」、111号「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」ですが、特に111号は差別待遇ですから女性の雇用問題にも関わってきます。ILOは日本を含めた各国に111号を批准させるべく例えば2008年のILO報告でも要請をしています。


The ILO Declaration Expert-Advisers (IDEAs) noted the intentions expressed by most governments, including the Government of Japan, to ratify or consider ratification of Conventions Nos.100 and/or 111. They encouraged the governments to accelerate this process so as to make an important step forward towards universal ratification.

ILO 宣言専門 アドバイザー (IDEAs) は、日本政府を含むほとんどの政府が示した100号および/または111 号の批准を検討する意向に注目した。IDEAsは普遍的な批准に向けた重要な一歩を進むよう、この批准に向けてのプロセスを加速するよう各政府に促した。


 2015年現在でもまだ日本が批准していない背景には(これはワタクシの邪推に過ぎませんが)、米国も111号を批准していないからとの慢心があるのではなかろうか。その米国ですが、オバマ政権下では2010年から大統領の諮問委員会としてILO委員会が招集されています。ILO条約の批准のための法的蓋然性について集中的に検証作業を行う第三者委員会では、特にこの111号の採択に向けて動いており、その様子は米国務省のサイトに掲載されている国連向け報告書からもうかがえます。


In May 2014, the President's Committee on the ILO pledged to redouble its efforts to ratify Convention 111 on Discrimination in Employment and Occupation, demonstrating our commitment to equal opportunity and treatment and the elimination of employment discrimination worldwide.

2014 年 5 月、ILO の雇用と職業における差別に関する条約111 を批准するための努力を倍加することを大統領諮問委員会が約束、機会均等および世界的な雇用差別撤廃への取り組みを示します。


プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、国民に「直接資金還元」する医療保険制度

ビジネス

MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに最大

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

中国過剰生産、解決策なければEU市場を保護=独財務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story