コラム

GoToトラベル、実は合理的だったのに...

2022年11月19日(土)15時55分
GOTOトラベル、コロナ

政権批判のやり玉に挙げられ非難ごうごうだったGoTo(20年11月、東京)Issei Kato-Reuters

<忘れられたニュースを振り返る石戸諭氏のコラム。感染を拡大させると批判された一昨年開始のGoToトラベルだが、悪くない施策だったのでは?>

2020年7月、安倍晋三政権下で始まった「GoToトラベル」事業は、新型コロナ禍で産業そのものが危機的状況に陥った観光業にとって、プラスに働いた政策だった。観光業が落ち込みのひどい業種だったことは、経済産業省の「第3次産業活動指数」などをみても明らかで、テコ入れは必至の状況だった。

しかし例によってと言うべきか、GoToトラベルは政権への不満とリンクしてしまい「感染を拡大させる愚策」「国民の命より経済が大切か」というような批判が投げられた。

21年に入り、批判する側が大きく取り上げたのが、京都大学の疫学者・西浦博氏のチームが発表した論文である。「GoToトラベル後に、旅行に関連する新型コロナウイルス感染者が最大6~7倍増加した」というニュースが駆け巡った。

これに対し経済学者の中田大悟氏(独立行政法人経済産業研究所)、飯田泰之氏(明治大学)が西浦論文での分析がGoToトラベルが感染拡大に与えた影響を捉えていないのではないか疑義を示し、西浦氏との間で建設的な議論になった。

この議論で明らかになったのは、西浦氏の論文は今後の研究のイントロダクションのようなものであり、そこまで強いエビデンスではなかったということだった。論文が示したのは、あくまでひとつの仮説であり、これをもってGoToの影響を断定的に報じることができるものではないということだ。この論文の取り上げ方をみても、批判する側は、政権批判ばかりに目が向いてしまい「経済もまた命の問題」という当たり前の視点を欠いていたように思える。

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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