コラム

コロナ後の新しい五輪モデルは「2024年パリが示す」と仏意欲 東京には何ができるか

2020年05月18日(月)14時35分

東京五輪の延期を決定した日本の様子をOuest France紙がビデオにまとめている(それにしても延期決定の政治の場も、小池都知事以外、男、男、男である。アスリートの半分は女性なのに。さすが男女平等度世界121位である

五輪が生き残るために

ドゥリュ氏はオリンピックを愛し、なんとしても続けることを望んでいる。


オリンピックとパラリンピックは祭典であり、あらゆる国籍と地域のアスリートにとって、一生涯の出会いとなるものです。五輪は世界を結びつけることを目的としています。

五輪は「ザ・スポーツ」です。普遍的な平和、出会い、そして他者への敬意を払う独特の一瞬(とき)なのです。

だからこそ、五輪は有用なのですーーましてや危機の時代には。

五輪と変化する世界との関連性を保ち、適合させるために、五輪を再考しなければなりません。現実の世界から切り離されて、どのような代価を払ってでも今の
ままで踏みとどまる、などということは出来ないでしょう。

そして彼は、『種の起源』を著したチャールズ・ダーウィンの言葉を引用して、今の時代に合わせた五輪が必須であることを繰り返し訴えている。


「生き残るのは、最も強い種ではないし、最も知的な種でもない。変化に最も適応することが出来る種である」とダーウインは述べています。


すべての人が、改革の必要性については同意しますが、この新しいモデルの「方法」を見つけるのは私たちなのです。

こう言って、トリビューンを締めくくっている。

ドゥリュ氏はかねがね、「組織によって物事を成し遂げるには、透明性がなければならない。でも秘密主義の信仰に執着している人がいる」と批判してきた。

このようなトリビューンを発表したのは、まずはフランス国民の間に、オープンに広く公に議論が喚起されることを願ってのことだろう。

この発表にどの程度パリ大会組織委員会が関わっているかはわからないが、危機や困難にあって強い個性が登場して、国民的議論を呼び起こそうと演説するのは、実にフランス社会らしいと言える。日本ではあまり見かけない。

果たして、パリ五輪とフランスは、どの程度、オリンピックに対する世界の世論を喚起することが出来るだろうか。

そして五輪の組織委員会は、自浄作用をもつことが出来るのだろうか。危機を乗り越えて、世界中の人々に受け入れられる新しいオリンピックをつくっていくことが出来るのだろうか。

それにはまず、次の開催国である日本、つまり私たち日本人が真剣に議論しなければならないのではないだろうか。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シカゴ連銀公表の米失業率、10月概算値は4.4% 

ワールド

米民主党ペロシ議員が政界引退へ 女性初の米下院議長

ビジネス

英中銀が金利据え置き、5対4の僅差 12月利下げの

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、9月は前月比0.1%減 予想外
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 8
    ファン熱狂も「マジで削除して」と娘は赤面...マライ…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    コメ価格5キロ4000円時代を容認? 鈴木農相の「減反…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story