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欧米との協力関係の陰に潜む、インドのネット世論操作の実態とは?
さらに気になるのはIndian Chronicles以降、大規模な暴露がないことだ。Indian Chroniclesへの対応で欧米はインドに対して忖度するというシグナルを送ったので、インドがやめるはずはなく、より広範囲の活動を行っている可能性の方が高い。実際、欧米のメディア以外ではネットあるいはそれ以外の影響工作に関する記事が散見される。しかし、欧米以外のメディアの報道が欧米に届くことは稀だ。
欧米各国とSNSプラットフォームから忖度を受けて自由にネット世論操作や連動した工作活動を行えるメリットを生かして、インドは中露と並ぶネット世論操作大国でありながら実態を知られることがない。
インドの政権は右派過激主義
インドのもうひとつの重要かつ危険な特徴は政権与党が支持するHindutvaだ。Hindutvaは宗教的な側面が強調されることも多いが、実態としては右派過激主義(RWE)の特徴であるナショナリズム、人種差別主義、外国人嫌悪、反民主主義、強い国家、陰謀論、マイノリティへの攻撃を持つことが最近の研究「Identifying Themes of Right-Wing Extremism in Hindutva Discourse on Twitter」で明らかになっている。
当然だが、Hindutvaは欧米が提唱する民主主義的価値感とは相容れない。Hindutvaの母体であるRashtriya Swayamsevak Sangh (RSS)という準軍事組織は50万人以上のメンバーを抱え、6万近い支部を持つ。RSSは災害などの際には救援を行ったりするが、その一方でイスラム教や批判的な活動家、カースト下位の者などに対しては暴力やいやがらせを行う。インド首相のナレンドラ・モディおよび閣僚の多くもRSSのメンバーとなっている。
Hindutvaの主張はそれを信奉しない人間には容易に受け入れられないものも多い。たとえばヒンズー教で神聖とされる「牛」の扱いである。2014年にBJPが政権を握って以来、牛を保護する法律がいくつかの州で厳罰化され、牛の保護のための国家牛委員会(Rashtriya Kamdhenu Aayog、RKA)も設立された。Hindutvaを支持する団体は牛の保護を理由に他の宗教の信者やカースト下位の者への攻撃を強化した。
ある州は牛の保護と福祉のための委員会を作り、別の州は牛の保護を強化した法律を施行した。特にカルナータカ州では、牛の自警団が行った暴力行為は免罪されることになった。2021年にはBJPが牛肉や加工製品の販売、保管、輸送を全面的に禁止する法律を提案した。
インドには28の州があるが、そのうち20では牛を屠畜することが禁止されている。牛に関係した暴力事件の90%以上はこの20の州で起きており、罰則が厳しい州ほど起きやすくなっている。牛の屠畜あるいは取引が行われたという疑いに起因するリンチや殺人は多数発生している。またインドは世界有数の牛肉輸出国であり、規制の強化、厳罰化は多くの人々の収入に影響している。
強力な国内監視システム
こうした体制を支える仕組みが統合化されつつある監視と管理である。すでに一度記事にしているが、生体情報を含む国民の個人情報、金融を一括で管理するAadhaarが普及している。公的書類の電子化も進んでおり、生活に必要なものの多くはオンラインで可能になりつつある。
データ漏洩など信頼性に疑問のあるAadhaarだが、India Stackと呼ばれるAPIを公開したことでサードパーティの参入が進んでいる。India StackはAPI群であり、これをサードパーティが利用することで本人認証や決済、あるいは公的文書の管理を行うことができる。特に普及しているのは統合決済インターフェース(UPI)であり、UPIの利用した決済は短期間で件数ベースでもっとも利用される決済方法になった。
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