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台湾有事は近づいているのか?
2年前の記事で紹介したように、とっくに民主主義は世界の多数派ではなくなっている。今後、さらにその数を減らす可能性が高い。世界はアメリカの統治モデルが有効に機能しない不安定なものになっていく。
中国にも人口や経済の問題はあるものの、アメリカが抱えている問題の方が大きく、時間が経つほどアメリカの影響力は減少すると考える方が妥当だ。中国が拙速な行動を起こす必要はない。
付け加えると、中国はサイバー攻撃能力を強化、拡大しており、こちらも時間とともに脅威が増している。たとえばサイバー攻撃に用いられるシステムの弱点=脆弱性がある。アメリカ企業は自社製品の脆弱性の発見に対して報奨金を支払っているが、その支払い先の1位は当然アメリカ国内だが、2位は中国で、その差は5%と大きくない(参考:過去記事)。中国は当然すべての脆弱性をアメリカ企業に知らせているわけではないので、実際にはアメリカを上回っている可能性もある。
これは一例に過ぎないが、サイバー攻撃の高度化、規模の拡大などさまざまな点で中国のサイバー攻撃能力は進化している。この点でも時間は中国に有利に働く。
台湾有事と有事の準備
中国が実際に軍事侵攻するかどうかは別として、選択肢として存在する以上そのための準備は必要であり、その意図を見せることも重要だ。中国にとっては軍事侵攻の可能性を示してプレッシャーをかけながら、最終的に軍事侵攻をともなわない併合を実現する方が効率的だ。
全く同じことが台湾やアメリカ、日本にとっても言える。中国の軍事侵攻に本気で対抗する準備をしていることを見せて、中国に併合を諦めさせなければならない。中国にとって軍事侵攻は優先度の低い選択肢だが、アメリカや日本がなにも対策していないなら、優先度はあがるかもしれない。どちらにとっても軍事侵攻は避けたい選択肢だが、双方が本気で軍事侵攻を想定した準備を行うことで優先度を下げることができる。
今回のサイバー空間での出来事は、その準備に当たる。サイバー空間では軍事侵攻前の準備として、情報を収集し、マルウェアやバックドアを相手のネットワークに配備しておく。ロシアもウクライナ侵攻に先だってマルウェアを配備していたが、侵攻前に、ウクライナとその支援に当たったアメリカ企業などによって無効化された。
今回、グアムの施設やクラウドサービスあるいはNISCで起きたことは中国が進めている準備の一部が暴かれたと考えられる。中国は台湾有事に限らず、常時サイバー空間でこうした活動を行っており、常在戦場の展開を行っている。時間が経つほど、こうした仕掛けが台湾やアメリカ、日本、韓国といった国々のインフラや施設に仕込まれてゆく。
また、NISCの事件については、事件発生から3年経ってからの公開なので別の意図も感じる。
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