コラム

中国のデジタル影響工作最新動向──中国の外交官は1日平均778回ツイートする

2021年08月18日(水)18時45分

数に物を言わせて拡散する中国のデジタル影響工作の力は圧倒的だ  REUTERS/Thomas Peter

<中国のデジタル影響工作はまだ発展途上であり、洗練されているは言いがたい。しかし数に物を言わせて拡散する力は圧倒的であり、技術も進化している......>

中国のデジタル影響工作は、人民解放軍(PLA)、中国共産主義青年団(CYL)、宣伝部(Propaganda Department=PD)、中国人民政治協商会議(CPPCC)、国務院、国務院台湾事務弁公室、中国サイバー空間管理局、中国共産党統一戦線工作部(UFWD)および中国メディアなど政府関連機関が行っており、進化しているものの、2020年の台湾総統選挙では反中国候補の当選を阻止することはできなかった。台湾の選挙で中国が取った手段については、「Deafening Whispers China's Information Operation and Taiwan's 2020 Election」(台湾民主実験室)にくわしい。そうした失敗の一方、影響力の行使方法が進化していることも確かである。

以前、この連載でご紹介したように。中国はSNS利用者シェア、国営メディアのフォロワー増大、フェイスブックのフォロワー数、いいね!の数など、サイバー空間において中国の影響力がは拡大していた。あれから1年経ったが、その状況は変わらない。

we are socialが2021年1月に公開した「DIGITAL2021」によれば世界のSNSの利用者シェアは下記である。単位は100万人でアクティブな利用者数である。

ichida20210818c.jpg

上記のうち中国企業のSNSは、6位WeChat(メッセンジャー)、7位TiKToK(動画)、8位QQ(メッセンジャー)、9位DOUYIN(TiKToKに似たサービス)、10位Weibo(ツイッターに似たサービス)だ。SNS利用者数トップ10の中でフェイスブックグループでも中国企業のSNSでもないのは、2位のYouTube(グーグルグループ)の約20億人のみとなっている。世界のSNSはフェイスブックグループと中国企業のSNSに二分されていると言っても過言ではないだろう。なお、日本で人気のツイッターは16位で約3億人の利用者に留まっている。

デジタル影響工作のための新しい手法も開発されており、オクスフォード大学インターネット研究所では、最新動向を伝える「China Information Operations Newsletter」の発行を月次で行っている。最新号は8月号だ。

最近の動きで目立っているのは下記である。

・外交官によるパブリック・ディプロマシーの強化
・ディアスポラへのアプローチ
・YouTubeでのAI(StyleGAN)で生成した画像の利用

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story