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中国の一帯一路の裏で行われているサイバー空間の戦い
一帯一路で行われているのは「超限戦」か...... REUTERS/Thomas Peter
<中国が一帯一路で行っているのは軍事、経済、文化などすべてを統合的に利用する「超限戦」と呼ばれる戦いなのか。一帯一路とともに各地で展開されているサイバー空間における超限戦について紹介しよう......>
「超限戦」としての一帯一路
現在、中国はシルクロード経済圈構想=一帯一路を世界に展開している。参加国はすでに120カ国を超え、中国に批判的な国の多いヨーロッパでもG7の一角であるイタリアが参加した他、ギリシャなども参加している。その範囲はじょじょに広がっており、ロシアと手を組んで北極圏を対象にした「Ice Silk Road」(中華人民共和国商務部、2017年11月09日)構想も進めている。
一帯一路では中国がローンを提供し、中国企業が港湾などのインフラなどを整備した後に、相手国が返済困難に陥ってインフラの利用権などを中国に手渡すことが問題視されている。いわゆる「債務の罠」と呼ばれるものだ。スリランカのハンバントタ港が2017年7月から99年もの間、中国国有企業にリースされることになったことは有名だ。マレーシアでは事業撤退を一度表明し、その後中国側が割り引いたことで事業撤退を免れている。
一帯一路は経済圏構想であるが、経済活動だけに目を奪われていると本質を見誤る。「中国・アフリカ協力フォーラム・北京行動計画」(中華人民共和国外交部、2018年9月5日)を見てもわかるように、政治、医療、教育、文化、メディア、安全保障など幅広い範囲を網羅している。
中国が一帯一路で行っているのは「超限戦」と呼ばれる「戦争」と考えるべきだろう。超限戦とは21年前の1999年に中国で刊行された『超限戦』という書物で提示された新しい戦争の形のことである。角川新書版からその内容を端的に表している箇所を引用する。
「あらゆるものが手段となり、あらゆるところに情報が伝わり、あらゆるところが戦場になりうる。すべての兵器と技術が組み合わされ、戦争と非戦争、軍事と非軍事という全く別の世界の間に横たわっていたすべての境界が打ち破られるのだ」(『超限戦』喬良、王湘穂 角川新書)
超限戦とは戦争のために、軍事、経済、文化などすべてを統合的に利用することである。軍事主体の戦争は、もはや過去のものとなった。もはや軍事と非軍事の区別はない。そう考えたのは中国だけではなかった。2014年にはロシアの新軍事ドクトリンに超限戦に近い戦争の概念が盛り込まれ、欧米諸国はこれを「ハイブリッド戦」と呼び、世界は否応なしに超限戦/ハイブリッド戦の時代に突入した。近年のフェイクニュースやネット世論操作も超限戦あるいはハイブリッド戦のひとつである。
一帯一路の超限戦展開をお話しする前に、あまり知られていない事実を紹介しておきたい。
・2017年までの投資規模は120兆円から130兆円
アメリカのシンクタンク、外交問題評議会のレポート(Council on Foreign Relations、2020年1月28日)に紹介されているモルガン・スタンレーの予測では中国は2027年までに一帯一路に120兆円から130兆円に投資する。
・参加国合計で世界人口の62%、GDPの30%、エネルギー資源の75%(2018年時点)
2018年3月の段階で中国と一帯一路参加国の人口は世界全体の62%を占め、GDPは世界全体の30%、エネルギー資源は75%となっている(China Q of Int' l Strategic Stud掲載論文、2019年1月)。
・測位衛星を世界でもっとも多く保有、次世代モバイル通信5Gで圧倒的なシェア
世界でもっとも多くのAI監視システムを提供、SNS利用者数ランキングトップ10の半分を中国SNSが占める。一帯一路の一部であるデジタル・シルクロード構想はデジタル技術をてこにした世界展開である。中国のIT技術は現在世界の最先端を走っており、多くの市場を席巻しつつある(ハーバービジネスオンライン、2020年1月28日)。
・中国において政府と企業、研究機関は一体
中国政府と企業は中国人民政治協商会議などを通して結びついており、大学などの研究機関とは国家重点実験室などで結びついている。企業や研究機関はこれらを通して、中国政府の強い影響下にある。また、中国には国家情報法があり、そこには中国のすべての組織と国民は国家情報活動への協力を義務づけられている。
これらをご覧いただくとわかるように一帯一路は経済をてこにして世界を変革する超限戦となっている。今回は一帯一路とともに展開されているサイバー空間における超限戦について紹介したい。
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