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研究者の死後、蔵書はどう処分されるのか──の、3つの後日談
オマル・ハイヤームのロバーイヤートといえば、19世紀後半に英国の詩人、エドワード・フィッツジェラルドによって英訳されて以来、イランのみならず、というよりイラン以上に世界的に知られるようになった傑作である。ペルシア語原典からだけでなく、英語からの重訳も含めたくさんの日本語訳が公刊されている。
「ペルシア語」以外は日本語と英語・フランス語・ドイツ語などで、いずれもロバーイヤートの翻訳などであった。問題は「ペルシア語」の本で、妻からの依頼は、その4冊の書誌情報をテキスト化して送れというものであった。依頼された4冊はどれも古そうなので、貴重なものも含まれているかもしれず、図書館にはペルシア語ができる司書もいないので、一番頼みやすい私に白羽の矢が立ったというところであろう。
ずいぶん人使いが荒いなあと思いながらも、とりあえず、4冊の表紙などのデジタル画像を送ってもらって、調べてみると、オマル・ハイヤームのロバーイヤートは1冊だけで、もう1冊あったロバーイヤートは、タイトルこそ同じロバーイヤートだが、著者はオマル・ハイヤームではなく、アブー・サイード・アボルヘイルという11世紀なかばに死んだ有名な神秘主義詩人であった。
また、残りの2冊はロバーイヤートですらなく、1冊はロンドンで発行された新約聖書のペルシア語訳(ちなみにこの本には、神保町の有名な古書店、一誠堂のシールが貼ってあった)、もう1冊は19世紀から20世紀はじめにかけて活躍したインドの作家で、ウルドゥー語の最初の小説家ともいわれるナジール・アフマドの作品であった(ただし、こちらは中身を見ていないので、本文がペルシア語なのかウルドゥー語なのか不明だが、ラホールの出版社から出されたものなので、おそらくウルドゥー語だろう)。
本をめぐるさまざまな人間模様にも思いを馳せる
コレクションの主がなぜ、このアラビア文字で書かれた4冊を含む「ロバーイヤート」関連本を後生大事にもっていたのかはわからない。いずれ翻訳でもしようとしたのであろうか?
ただし、オマル・ハイヤームのペルシア語のテキストが1冊だけというのは解せない。明らかに異なる本(しかもそのうちの1冊はウルドゥー文学)が紛れこんでいたことから、ペルシア語がちゃんと読めたかどうかもわからない。ヨーロッパ諸語から訳して、ペルシア語の原典はあくまで参考という程度かもしれない。ペルシア語もウルドゥー語もアラビア文字を使っているので、適当に選んだ可能性もある。
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