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アングル:節約志向強める中国Z世代、経済成長にリスク

2025年01月26日(日)08時00分

  1月20日、中国では、新型コロナ禍に始まり不動産危機によって深まった倹約志向が一段と強まっている。上海で16日撮影(2025年 ロイター/Go Nakamura)

Ethan Wang Yukun Zhang Ryan Woo

[北京 20日 ロイター] - 中国では、新型コロナ禍に始まり不動産危機によって深まった倹約志向が一段と強まっている。Z世代が政府の消費奨励策に背を向け、ますます貯蓄を増やしているのだ。

中国版インスタグラムの「小紅書」では、30歳未満の多くの若者がオフィスでのランチ代や買い物代を節約する方法について意見交換をしている。

インフルエンサーも、倹約をライフスタイルに取り入れるためのヒントを共有している。節約術に関する投稿は150万件を超え、閲覧数は1億3000万回を突破した。

「経済状況はかなり悪いと感じている。お金を稼ぐのはだれにとっても難しそうだから自分の財布は自分で守ることが重要だと思う」と語るのは、6カ月前に大学を卒業して電子商取引(EC)大手アリババに入社し、比較的高給を得ているアバ・スーさん(26)だ。

インターネット業界を「不安定」だと考えるスーさんは衝動買いを控え、月給の100倍に当たる200万元(4260万円)を貯金する長期計画を立てていると語った。

スマートフォン決済サービス「アリペイ(支付宝)」で人気のオンライン・マネーマーケット・ファンド「余額宝」のデータによると、2000年以降に生まれたユーザーは24年末時点で毎月平均20回預け入れを行っており、その数は5月から倍増した。

5月の数字自体、前年同月比で10%増えていた。また余額宝によると、5月に各人が口座に保有していた資金は前年同月比50%増の約3000元だった。

一部のエコノミストは、貯蓄傾向が根を張れば需要を空洞化させかねないと警告している。折しも政策当局は、国内総生産(GDP)の押し上げを国内消費に頼ろうとしているところだ。根強い悲観論は既に、自動車からタピオカミルクティーに至るまで消費者物価の下落を招いており、中国の長期的な潜在成長力にも打撃を及ぼすだろう。

この状況は、いわゆる「月光族」世代の浪費的な態度とは対照的だ。月光族とは1980年代から90年代生まれの世代を指す。

米ジョンズ・ホプキンス大学の政治経済学教授、ホーフン・フン氏によると、この世代は雇用機会の拡大、所得の増加、生活水準の向上しか経験せずに育っており、月給をその月に使い切ってしまうことで知られていた。

しかし新型コロナウイルスや景気後退、政府によるハイテク企業など民間セクターへの締め付けを経て、今日の若者は最悪の事態に備える必要があると実感していると、フン氏は語る。「楽観主義が失われるのは、1978年に改革解放政策が開始してから初めてのことだ」という。

<雇用の不安>

悲観論が広がる中、多くの若者は政府機関や国有企業などで「鉄飯碗(安定した雇用)」の仕事を求めている。スーさんは将来、公務員試験を受けるつもりだと語った。

16歳から24歳までの約1億人の失業率は過去2年間、高止まりしている。2023年6月には若年層の失業率が21.3%と過去最高を記録。これを受けて当局はデータの公表を停止して算出方法の「再評価」に乗り出し、調整を経て発表された昨年12月の同失業率は15.7%だった。

深セン市在住の高校英語教師、リリー・リーさん(26)は、9月に現在の職に就いたばかりだが、1万元を超える月給の80%を貯金し、洋服やコンサートチケットなど不要不急の支出を大幅に減らしている。

彼女は会社勤務を希望していたが、安定性を求めて学校の教師になった。2、3年後には別の仕事を探そうと考えているが、見つかるかどうかは分からないと語る。

人生を最大限に楽しむというミレニアル世代の哲学とは異なり、中国のZ世代は「実存的不安」を抱えており、その不安は同国の経済停滞とともに深まるばかりだ。

最近まで、Z世代は「躺平(寝そべり)」という言葉を使って「内巻」に見舞われた社会を嘆いていた。内巻とは、無意味な競争環境に閉じ込められて抜け出せなくなる状態を指す。

寝そべりという流行語は、敗北主義をたたえる「喪」文化や、人生に対する無関心な態度を指す「仏系(仏教系)」若者の登場を経て生まれた。

香港のナティクシスのシニアエコノミスト、ギャリー・ン氏は「『内巻』の傾向が続けば、企業は縮小する需要を奪い合って価格競争が激化し、ディスインフレが強まる可能性がある」とし、「このように消費が抑制されれば、中価格帯の製品やサービスが空洞化しかねない。中国の長期潜在成長率は鈍化するだろう」と予想した。

17日に発表された中国の2024年のGDP成長率は5.0%。しかし今後2年間で成長率は鈍化すると見込まれている。

ロイター
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