ニュース速報
ワールド

米とUAE、シリア制裁解除巡り協議 イランとの決別条件=関係者

2024年12月03日(火)08時04分

 12月2日、米国とアラブ首長国連邦(UAE)は、シリアのアサド大統領がイランと決別し、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの武器供給ルートを遮断するなら、対シリア制裁解除が可能かどうか協議したことが分かった。シリア・ダマスカスで1日撮影(2024年 ロイター/SANA)

Maya Gebeily

[ベイルート/ジュネーブ/ドバイ 2日 ロイター] - 米国とアラブ首長国連邦(UAE)は、シリアのアサド大統領がイランと決別し、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの武器供給ルートを遮断するなら、対シリア制裁解除が可能かどうか協議したことが分かった。事情に詳しい5人の関係者が明かした。

背景には米国がシリアに科した包括的な制裁が今月20日に期限切れを迎えることや、イスラエルがヒズボラやパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスなどの親イラン勢力に対して攻勢を強めているという事情がある。

米国とUAEの協議は、先週シリアで反体制派が北部の要衝アレッポに行った大規模攻撃よりも前に実施された。

これらの関係者は、シリア反体制派の動きは米国とUAEが模索してきたアサド政権の弱体化を如実に物語るが、同政権が反撃のためイランの支援を受け入れれば、シリアとイランの離間を図るせっかくの取り組みに水が差されかねないと解説した。

シリアで2011年に内戦が勃発して以来、アサド政権は反体制派に対抗するためイランと親密な関係を続けている。

一方、米国とUAEは、制裁解除をちらつかせることでそうしたシリアとイランの関係にくさびを打ち込むチャンスと考えているもようだ。

シリアはイスラム教スンニ派が多数を占めるが、シーア派系が中心のアサド政権が同じシーア派のイランと接近した後、多くのスンニ派アラブ諸国はシリアと距離を置くようになった。ただUAEはスンニ派アラブ諸国とシリアの関係改善を期待し、22年にはアサド大統領を国内に招き、その後のアラブ連盟へのシリア復帰の道筋をつけた。

複数の関係者によると、スンニ派アラブ諸国とシリアの関係改善の取り組みにとっては米国のシリア制裁が足かせになっているという。

事情に詳しい米国のある関係者は、UAEがシリア復興の資金支援に関心を持っていることや、イスラエルのヒズボラ攻撃でアサド政権の足場が弱くなったことなどに関して、ホワイトハウス高官らがUAE側と話し合ったと述べた。

イスラエルが親イラン勢力を攻撃しつつ、アサド政権への制裁を撤廃すれば、シリアとイラン、ヒズボラを「アメとムチ」によって分断できる、とこの関係者は指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国大統領が戒厳令、国会は拒否 軍介入やデモなどで

ワールド

イスラエル高官、トランプ氏の人質解放要求を歓迎 ガ

ワールド

ブラジル第3四半期GDP、前期比0.9%増 金融引

ビジネス

米求人件数、10月は予想上回る増加 解雇は減少
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 6
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 7
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 8
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 9
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 10
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 9
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 10
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中