米とUAE、シリア制裁解除巡り協議 イランとの決別条件=関係者
12月2日、米国とアラブ首長国連邦(UAE)は、シリアのアサド大統領がイランと決別し、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの武器供給ルートを遮断するなら、対シリア制裁解除が可能かどうか協議したことが分かった。シリア・ダマスカスで1日撮影(2024年 ロイター/SANA)
Maya Gebeily
[ベイルート/ジュネーブ/ドバイ 2日 ロイター] - 米国とアラブ首長国連邦(UAE)は、シリアのアサド大統領がイランと決別し、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの武器供給ルートを遮断するなら、対シリア制裁解除が可能かどうか協議したことが分かった。事情に詳しい5人の関係者が明かした。
背景には米国がシリアに科した包括的な制裁が今月20日に期限切れを迎えることや、イスラエルがヒズボラやパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスなどの親イラン勢力に対して攻勢を強めているという事情がある。
米国とUAEの協議は、先週シリアで反体制派が北部の要衝アレッポに行った大規模攻撃よりも前に実施された。
これらの関係者は、シリア反体制派の動きは米国とUAEが模索してきたアサド政権の弱体化を如実に物語るが、同政権が反撃のためイランの支援を受け入れれば、シリアとイランの離間を図るせっかくの取り組みに水が差されかねないと解説した。
シリアで2011年に内戦が勃発して以来、アサド政権は反体制派に対抗するためイランと親密な関係を続けている。
一方、米国とUAEは、制裁解除をちらつかせることでそうしたシリアとイランの関係にくさびを打ち込むチャンスと考えているもようだ。
シリアはイスラム教スンニ派が多数を占めるが、シーア派系が中心のアサド政権が同じシーア派のイランと接近した後、多くのスンニ派アラブ諸国はシリアと距離を置くようになった。ただUAEはスンニ派アラブ諸国とシリアの関係改善を期待し、22年にはアサド大統領を国内に招き、その後のアラブ連盟へのシリア復帰の道筋をつけた。
複数の関係者によると、スンニ派アラブ諸国とシリアの関係改善の取り組みにとっては米国のシリア制裁が足かせになっているという。
事情に詳しい米国のある関係者は、UAEがシリア復興の資金支援に関心を持っていることや、イスラエルのヒズボラ攻撃でアサド政権の足場が弱くなったことなどに関して、ホワイトハウス高官らがUAE側と話し合ったと述べた。
イスラエルが親イラン勢力を攻撃しつつ、アサド政権への制裁を撤廃すれば、シリアとイラン、ヒズボラを「アメとムチ」によって分断できる、とこの関係者は指摘した。