中国の対EU対抗措置、高級品が標的になる可能性低い=アナリスト
10月9日、欧州連合(EU)が中国製電気自動車(EV)に追加関税を課すことを決定したのを受け、フランスのエルメスのハンドバッグや、ディオールのスリングバックパンプスといった高級品が中国による次の輸入関税を課される報復対象になるとの懸念から欧州高級品株が下落した。写真はエルメスの買い物袋。香港で昨年12月撮影(2024 ロイター/Tyrone Siu)
Casey Hall
[上海 9日 ロイター] - 欧州連合(EU)が中国製電気自動車(EV)に追加関税を課すことを決定したのを受け、フランスのエルメスのハンドバッグや、ディオールのスリングバックパンプスといった高級品が中国による次の輸入関税を課される報復対象になるとの懸念から欧州高級品株が下落した。しかし、アナリストらは中国がそのような手を打つ可能性は低いとの見方を示す。
中国・上海に拠点を置く技術革新コンサルティング会社、トラジェクトリーのパトリス・ノルデイ最高経営責任者(CEO)は「中国政府がEV関税にどのように対応するのかが問われている。エスカレートするのかと言えば、私はそう思う。高級品を狙うのかと言えば私はそう思わない」と語った。
EUとの貿易摩擦で、中国はこれまでのところブランデー、豚肉、乳製品をターゲットにしている。これらはいずれもEUに輸入される中国製EVに追加関税をかけるよう働きかけたフランスの主力商品となっている。
中国がEU産ブランデーに対する暫定的な反ダンピング(不当廉売)措置を発表した8日、高級コニャック「ヘネシー」を販売するフランスのモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)、エルメス、ケリング、イタリアのサルヴァトーレ・フェラガモ、英バーバリーの株価は2─6%下落した。
デジタル・ラグジュアリー・グループの中国コンサルティング担当マネジングディレクター、ジャック・ロイゼン氏は中国での高級品を報復関税の標的にすることは、中国が高級ブランド企業に対して一貫して好意的な政策を取ってきたことに逆行すると指摘。一例として海南省が免税品販売の一大拠点となったのは、政策立案者が中国で高級品を買ってもらうことは中国にとって有益だと認めたことが大きいと言及した
また「高級ブランドが中国での販売価格を上げざるを得ないような新たな財政状況が生まれれば、中国の消費者が国外で多額の支出をするインセンティブが一段と働くことになり、政府が求めることとは正反対になる」と説明した。
モーニングスターのシニアエクイティアナリスト、ジェレナ・ソコロワ氏は、中国の高級品市場は最近の減速を考慮しても、2024年に世界全体の35%を占めるとの見通しを紹介。中国が輸入高級品に対する関税や、国内消費税を引き上げることへの警戒感だけで高級ブランドを展開するフランスの複合企業に打撃を与えることを意味すると話した。
フランスから中国への23年のブランデーの出荷額は17億ドルに達し、中国の蒸留酒輸入額の99%を占めた。中国に23年に輸入された欧州の高級品は計110億ユーロ(120億ドル)だった。
上海にある中国欧州国際ビジネススクールのアルバート・フー教授(経済学)は、高級品の市場規模が非常に大きいため中国政府の標的にはなりにくいかもしれないとして「現時点ではEU、中国のいずれも、双方の経済に打撃を与えるような全面的な貿易戦争を望んでいないと思う」との見解を示した。