アングル:バイデン氏、予備選「初戦」で圧勝できるか 年齢問題などで支持離れも
米東部ニューハンプシャー州で23日、大統領選の民主党候補を選ぶ予備選が行われる。写真はディーン・フィリップス下院議員。ニューハンプシャー州マンチェスターで8日撮影(2024年 ロイター/Brian Snyder)
Jarrett Renshaw
[マンチェスター(米ニューハンプシャー州) 11日 ロイター] - 米東部ニューハンプシャー州で23日、大統領選の民主党候補を選ぶ予備選が行われる。現職のバイデン大統領が苦戦する公算は極めて乏しいが、もしそうなれば、ティム・フィッツパトリックさん(24)のような一部の有権者の心情が反映されるからだろう。
大学生のフィッツパトリックさんは2020年の大統領選でバイデン氏に投票したが、現在はバイデン氏の化石燃料プロジェクト支持や、学生ローン返済免除を確実に実行できなかったことにうんざりし、81歳という高齢で果たして2期目を全うする元気があるのか非常に心配している。
フィッツパトリックさんは、民主党の候補指名争いに名乗りを上げている1人だが知名度の低いフィリップス下院議員に触れて「私と彼は政治信条が一致しているとは言えない」と話しながらも、バイデン氏に比べれば評価できるので、今回支持することを決めたと明かした。
実際複数の世論調査では、有権者の間でバイデン氏の年齢に対する懸念の大きさが浮かび上がっており、20年と同じく共和党候補がトランプ氏となった場合、本選で勝つのに苦心することが示唆されている。
そうした中、ニューハンプシャー州の予備選でフィリップス氏や、同じ泡沫候補の女性作家ウィリアムソン氏が予想外に健闘すれば、バイデン氏再選への疑念が高まりかねない。
今年の同州予備選は異例の形になっている。民主党全国委員会が2月3日の南部サウスカロライナ州予備選を、党候補選びの初戦にすると決定したのを無視し、長年にわたって全米で最初の予備選を開催してきたニューハンプシャー州側が今月23日に日程を押し込んだためで、バイデン氏陣営は正式にはニューハンプシャー州予備選への参加を見送ると表明した。
それでも政治評論家の見立てでは、この予備選でバイデン氏が楽勝するとみられる。ニューハンプシャー大学が今週実施した調査では、同州有権者のバイデン氏支持率は69%で、フィリップス氏の7%とウィリアムソン氏の6%を大きく引き離している。
ただロイターが、予備選で投票するつもりという数十人余りの同州の民主党員と無党派層有権者に話を聞くと、大多数はまだ態度を決めていないか、フィリップス氏もしくはウィリアムソン氏に票を入れると答えており、バイデン氏が確実に大差で勝つとは言い切れない。
地元ブロガーのデール・コイさん(70)は「バイデン氏の年齢は私にとって現実的な問題になる。80歳になれば精神エネルギーの面でさまざまな差しさわりが出始めるからだ」と述べ、今回はフィリップス氏を支持するだろうとしている。
<弾みはつかず>
そのフィリップ氏は今週になっても、選挙戦に勢いが出てきた気配はほとんどうかがえない。同氏が開いた選挙イベントは大人数を集められず、遊説に同行する報道陣のために用意したバンは空席だらけ。
同氏がこれまでで最も多くの人を呼び寄せたのは、マンチェスターのホテルで開催したウィリアムソン氏との討論会だが、ほとんどの聴衆は遠足に来ていた高校生で、選挙権はない。
9日には屋外に選挙カーを止めてコーヒーを差し出しながら有権者に話しかけようとしたが、有権者は1人も姿を見せなかった。
フィリップ氏が打ち出す政策は、新生児に投資のための1000ドルを贈ることや、均衡的な連邦財政、富裕な大学に課税して中間層の教育資金を支援することなど。同氏がこれまでに中心的な争点として提起しているのは世論調査におけるバイデン氏の支持伸び悩みだ。
フィリップス氏は、民主党が強力な戦術を駆使し、見込みのある対抗馬の出現を封じ込めようとしているのは、米国で最も危険な政治家であるトランプ氏に利するだけだと批判している。
選対本部におけるロイターのインタビューでは「負ける確率が高いレースだと分かっていながらそこに突入しつつ、別の候補を抑圧するなら、敗北に加担することになると信じている」と語った。
一方バイデン氏陣営は、足元の世論調査結果が振るわなくても、選挙戦が進んでトランプ氏とバイデン氏の一騎打ちの構図が鮮明になれば、不安に駆られた民主党員が11月の本選でバイデン氏の下に結集すると自信を見せる。
ニューハンプシャー州でバイデン氏に不満を持つ人々でさえも、そうした展開になりそうだと認めている。
フィッツパトリックさんは「バイデン氏の方がトランプ氏よりましなのは明らかだ。はなはだ不本意だが仕方なく受け入れることになる」と話した。
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