ニュース速報

ワールド

インド中銀、予想通り金利据え置き 流動性引き締め措置も発表

2023年08月10日(木)18時44分

インド準備銀行(中央銀行、RBI)は10日、主要政策金利のレポレートを6.5%に据え置いた。写真はインド中銀のロゴ。ムンバイで4月撮影。(2023年 ロイター/Francis Mascarenhas/File Photo)

[ムンバイ 10日 ロイター] - インド準備銀行(中央銀行、RBI)は10日、主要政策金利のレポレートを6.5%に据え置くことを全会一致で決定した。据え置きは3会合連続で、市場の予想通りだった。

同時に、市中銀行が中銀に預け入れる比率である現金準備率を時限的に上乗せして流動性を引き締める措置も発表した。ここ数週間の食品価格の季節的な上昇幅が例年より大きく、インフレ懸念が再燃したことに対応した。

中銀はインフレ抑制のために2022年5月以降、計250ベーシスポイント(bp)の利上げを行っている。

中銀の金利据え置き決定を受けて、通貨ルピーは対ドルで若干下げた。

インドの指標10年債利回りは現金準備率の上乗せが発表されたことを受けて一時7.1861%に上昇したが、時限的措置と総裁が説明するとすぐに低下した。

中銀のダス総裁は、インフレ率が中銀の目標内に収まるよう着実に図ると同時に景気支援を継続する意図で「緩和策解除」の政策スタンスを維持したと説明した。委員会の6人のメンバーのうち5人がこのスタンスを支持した。

ダス氏は「インフレの押し上げと抑制で流動性は重要な役割を果たす」とし「インフレに関する仕事はまだ終わっていない」と述べた。

中銀は食品価格の上昇を理由に今年度のインフレ見通しを従来の5.1%から5.4%へ引き上げた。7─9月期は6.2%と予想し、前回の5.2%から大幅に上方修正した。

ダス氏は食品価格の急騰のようなショックが持続する兆候が見られれば「行動しなければならない」と語った。

インドの総合インフレ率は6月に季節的要因による食品の値上がりで加速し、4カ月続いた鈍化傾向が止まった。アナリストらは7月のインフレ率が6.4%と、中銀が許容する2─6%のレンジの上限を突破したと予想している。

コタック・マヒンドラ銀行のチーフエコノミスト、ウパサナ・バードワジ氏は「天候不順と季節的要因による(価格)上昇のため、中銀は今後の会合でもタカ派バイアスを維持すると考えている」と述べた。一方で年内は金利が据え置かれると予想した。

中銀は成長率予想を6.5%に据え置いた。

ダス氏は「経済における需要は力強さを維持している」と指摘した。

キャピタル・エコノミクスは「追加利上げが実施されるとは思わない」とした上で「エルニーニョ現象の脅威が潜んでおり、主要新興国が緩和サイクルを開始しても、インド中銀が緩和を延期するリスクが高まっている。われわれは現在、来年初めの緩和開始を予想している」と述べた。

<約1兆ルピー吸収>

インド中銀は5月19日から7月28日までに増加した預金に対し、8月12日から2週間、10%の現金準備率を維持するよう求めた。これにより銀行システムから約1兆ルピー(120億7000万ドル)を吸収する。

ダス総裁は「この一時的な措置を行っても、経済の信用ニーズを満たすのに十分な流動性が銀行システムに存在する」と述べた。中銀は9月8日までにこの措置を見直すとした。

トレーダーは週明けから翌日物などの短期金利が上昇するとみている。

エムケイ・グローバルのエコノミスト、マダビ・アローラ氏は、中銀が現金準備率を上乗せし流動性を吸収することにより、短期金融市場で金利が小幅に上昇すると予想した。銀行の貸出マージンに「わずかな影響」が出るとみている。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏のDOGE、米政府職員監視にAI利用=関係

ワールド

メキシコ、麻薬カルテルへの米無人機攻撃計画「断固拒

ビジネス

欧州委員長と中国首相が電話会談、米関税巡り協議

ビジネス

オーストリア中銀総裁「金利への見解変わらず」、トラ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及んでる...インド人男性の投稿にSNSで怒り爆発
  • 4
    これが中国の「スパイ船」...オーストラリア沖に出現…
  • 5
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 6
    反トランプのうねり、どこまで大きくなればアメリカ…
  • 7
    流石にこれは「非常識」?...夜間フライト中に乗客が…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    「茶色すぎて前が見えない」...ネパールを染める「危…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 6
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 7
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 8
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中