ニュース速報

ワールド

アングル:投資家が待望する新型コロナ臨床試験データ

2020年04月12日(日)08時10分

 新型コロナウイルス感染症の治療効果が期待されている医薬品の臨床試験データが出てくれば、米国株の反発が持続するかもしれないとして、投資家は結果の公表を待ち望んでいる。写真は米ミネソタ大学で3月19日撮影(2020年 ロイター/Craig Lassig)

[ニューヨーク 7日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染症の治療効果が期待されている医薬品の臨床試験データが出てくれば、米国株の反発が持続するかもしれないとして、投資家は結果の公表を待ち望んでいる。

米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス治験薬レムデシビルの試験結果は、今月中に出るとみられている。スイスのロシュ・ホールディングや米リジェネロン・ファーマスーティカルズなどの医薬品についても、近く試験結果が出ると期待されている。

専門家の予想では、新型コロナのワクチンが得られるのは少なくとも1年先になるとみられる。そうした中、治療薬を巡って何らかの進展があれば、投資家は感染拡大が抑制されて経済活動が一部再開する時期を予測しやすくなる。

「明るい臨床試験データが増えていけば、新型コロナもすべての疫病と同様、一過性の問題だという事実に胸をなでおろす投資家が増えるだろう」と語るのは、ナショナル・セキュリティーズの首席市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏だ。

米国その他の国々で、入院者数や集中治療を必要とする患者数に減速の兆しが出たこともあり、株価は反発に転じている。米S&P総合500種株価指数<.SPX>は、2月19日に付けた過去最高値からは約21%下落しているが、3月23日の安値からは19%持ち直した。

<数百の臨床試験>

米国立衛生研究所(NIH)のデータベースによると、新型コロナウイルス関連の臨床試験は現在330件以上行われている。他の症状の治療薬として承認済みの薬について、新型コロナへの効果を試験するものも多い。

ギリアドのダニエル・オデイ会長兼最高経営責任者(CEO)は3月28日、レムデシビルの最初のデータが「数週間中」に得られると述べており、アナリストは4月半ばにも公表される可能性があるとみている。

レムデシビルの絶大な効果が証明されると期待すべきではない、と楽観を戒める声もある。最初のデータは比較的重症の新型コロナ患者に対する試験から出てくる見通し。クレディ・スイスのバイオ技術アナリスト、エバン・シーガーマン氏によると、抗ウイルス薬は軽症の段階に最も効果を発揮するため、今回の最初のデータでは限定的な効果しか示されないかもしれない。

レムデシビルの効果が証明されたとしても、供給量に懸念が残る。ギリアドは先週、既存の供給量は治療コース14万回分強だと説明した。

リジェネロンと仏サノフィの「ケブザラ」の試験データも月内に出る可能性が期待されている。ロシュは関節リウマチ治療薬「アクテムラ」も新型コロナ感染症治療の臨床試験中だ。

数十年前の抗マラリア薬、「ヒドロキシクロロキン」についても研究が行われている。

トルイスト/サン・トラスト・アドバイザリー・サービシズの首席市場ストラテジスト、キース・ラーナー氏はロイターへの電子メールで「何かが効く、ということが分かるだけで、投資家は現在の状況の向こう側を考え始めることができる」と述べた。

(Lewis Krauskopf記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バイデン米大統領、日鉄のUSスチール買収阻止 安保

ワールド

トランプ氏、10日に量刑言い渡し 不倫口止め事件 

ビジネス

米国株式市場=反発、ハイテク株高い USスチール売

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、週間では1カ月ぶりの大幅な
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを拒否したのか?...「アンチ東大」の思想と歴史
  • 2
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...ミサイル直撃で建物が吹き飛ぶ瞬間映像
  • 3
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡...池井戸潤の『俺たちの箱根駅伝』を超える実話
  • 4
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 5
    韓国の捜査機関、ユン大統領の拘束執行を中止 警護庁…
  • 6
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 7
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 8
    中高年は、運動しないと「思考力」「ストレス耐性」…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    「これが育児のリアル」疲労困憊の新米ママが見せた…
  • 1
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も助けず携帯で撮影した」事件がえぐり出すNYの恥部
  • 2
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 3
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強みは『個性』。そこを僕らも大切にしたい」
  • 4
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 7
    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…
  • 8
    「弾薬庫で火災と爆発」ロシア最大の軍事演習場を複…
  • 9
    スターバックスのレシートが示す現実...たった3年で…
  • 10
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中