ニュース速報

ワールド

米副大統領、対中演説で香港デモ支持を表明 ナイキとNBAを批判

2019年10月25日(金)16時52分

 10月24日、ペンス米副大統領(写真)は、中国が香港市民の「権利や自由」を奪っていると批判するとともに、米スポーツ用品大手ナイキ と全米バスケットボール協会(NBA)は言論の自由を抑圧する中国政府の肩を持っていると痛烈に非難した。アンカラで17日撮影(2019年 ロイター/HUSEYIN ALDEMIR)

[ワシントン/北京 25日 ロイター] - ペンス米副大統領は24日の演説で、中国が香港市民の「権利や自由」を奪っているなどと批判した。中国外務省は25日、ペンス副大統領の発言に極めて強い憤りを感じるとし、断固抗議すると表明した。

ペンス副大統領は24日行った中国に関する演説で、中国は香港市民の「権利や自由」を奪っていると主張。米スポーツ用品大手ナイキ と全米バスケットボール協会(NBA)は言論の自由を抑圧する中国政府の肩を持っていると痛烈に非難した。

ただし、米国は中国との対立も両国の「デカップリング(分断)」も望んでいないとも述べた。

中国外務省の華春瑩報道官は25日の会見で、ペンス副大統領の発言に断固抗議すると表明。米国は、銃犯罪など国内の問題に取り組み、対応を修正すべきと指摘した。

<香港、台湾問題巡り批判>

ペンス副大統領は、中国が「監視国家」を樹立し、「一段と挑発的な」軍事行動を取っていると指摘。中国国民にとっては台湾の民主主義が望ましい道筋だとの見解を示すと同時に、香港で長期化するデモへの中国政府の対応を批判した。

「中国はここ数年、香港への介入を増大させ、国際的合意で保障されている香港の人々の権利や自由を奪う行動に従事している」とし、「われわれは香港の人々とともにある」と述べた。

イスラム教徒の少数民族であるウイグル人弾圧についても非難した。

<「中国政府の子会社のような振る舞い」>

ペンス氏は、NBAヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャー、ダリル・モーリー氏による香港デモ支持のツイートに中国側が激しく抗議した問題にも触れ、NBAもナイキもモーリー氏を擁護しなかったと非難。「NBAの一部有名選手やオーナーらは、言論の自由を行使していくらでも米国を批判するのに、外国の人々の自由や人権になると口をつぐんでしまう。中国共産党の肩を持ち、言論の自由を封じるなど、およそNBAは権威主義的な中国政府の完全子会社のごとき振る舞いだ」と述べた。

さらに、中国政府によるモーリー氏への抗議を受け、ナイキは中国国内の店舗からロケッツの関連グッズを撤去したと述べ、「ナイキは社会正義の推進を売りとしているのに、香港の問題に関してはむしろ社会的良心を捨て置いているようだ」と批判した。

「米国のあまりにも多くの多国籍企業は中国の目がくらむほどの資本や市場に追従し、中国共産党への批判だけでなく米国の価値観を肯定する発言も封じ込めている」と続けた。

ナイキとNBAおよびワシントンの中国大使館にペンス氏の発言についてコメントを求めたが、これまでのところ応じていない。

一方、中国政府系紙の環球時報は、ペンス氏は過去の批判の多くを繰り返したものの、依然として「楽観論の余地」はあると論評。「ペンス氏は両国のデカップリング(分断)を望んでいないと強調し、トランプ大統領が中国と新たな未来を始めることに前向きであると改めて表明した」と指摘した。

<通商協議控え市場は神経質に反応>

ペンス副大統領の演説は当初6月に予定されていたが、米中通商交渉への影響を配慮し、延期されていた。ペンス氏は1年前に行った対中政策に関する演説でも、タカ派的な姿勢を明確にした。

中国側とは、ムニューシン米財務長官が25日に通商協議を再開する予定となっており、ペンス氏のこの日の演説は注目されていた。米中は、11月にチリで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、「第1段階」の通商合意署名を目指している。

アナリストは、ペンス演説は通商合意への道は閉ざさずに、2020年米大統領選を念頭に、トランプ大統領の支持基盤に対し、中国への強硬姿勢は健在だとアピールする狙いがあるようだと分析している。

演説の中でペンス氏は、米国は「中国の発展を阻止することは目指していない」とし、「中国指導部との建設的な関係を望んでいる」と強調。その上で「長期にわたり米国民を利用してきた貿易慣行を終わらせ、新たに出直すこの稀なチャンスを捉える」よう中国に促した。

*内容を追加します。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「ウクライナに耳を傾けて」、会談決裂

ワールド

インド10─12月GDP、前年比+6.2%に加速 

ビジネス

中国2月製造業PMIは50.1、3カ月ぶり高水準 

ワールド

韓国輸出、2月は1%増に回復も予想下回る トランプ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    米ロ連携の「ゼレンスキーおろし」をウクライナ議会…
  • 6
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 7
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 8
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中