今後も見通し実現なら利上げ、ペースや時期は経済・物価次第=日銀総裁
1月24日、日銀の植田和男総裁(写真)は金融政策決定会合後の会見で「現在の実質金利は極めて低い水準にある」との認識を示し、今後も日銀の経済・物価見通しが実現していけば、それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことに変わりはないと述べた。日銀本店で同日撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Kentaro Sugiyama Takahiko Wada
[東京 24日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は24日、金融政策決定会合後の会見で「現在の実質金利は極めて低い水準にある」との認識を示し、今後も日銀の経済・物価見通しが実現していけば、それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことに変わりはないと述べた。調整のペースやタイミングは経済・物価情勢次第であり、予断は持っていないと語った。
日銀は今回の会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%に引き上げることを賛成多数で決めた。
総裁は利上げを決定したことについて「日本の経済・物価はこれまで示してきた見通しにおおむね沿って推移しており、先行き見通しが実現していく確度は高まってきていると判断した」と説明した。
判断の重要なポイントとして挙げていた春季労使交渉(春闘)の動向については、今年も賃上げを継続するという企業の声が増加しているほか、支店長会議で継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種、規模の企業に浸透してきているという報告があったと指摘。「昨年に続きしっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した」という。
もう一つのポイントだった米新政権の政策動向についても、トランプ大統領が政策の方向性を示す中で国際金融市場は全体として落ち着いており、利上げを妨げる材料にはならなかったと説明した。
今後トランプ政権が実際に関税を引き上げたり、当該国が報復措置をとったりした場合、インフレ率や世界経済にさまざまな影響が考えられるものの、「現状では関税の規模や広がりについて非常に不確実性が高い、決まっていない段階だ」と指摘。それがある程度固まったら経済・物価見通しなどに反映し、政策運営に生かしていきたいと語った。
植田総裁は、今回の利上げ後も実質金利は大幅なマイナスが続くことになると説明。「緩和的な金融環境は維持され、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている」と語った。
日銀の推計によると、中立金利は名目で1―2.5%の間に分布していると指摘し、「0.5%という金利水準はまだ距離ある」との見方を示した。
今回の決定会合を巡っては、氷見野良三副総裁と植田総裁が連日、利上げするかどうか議論すると事前に明言する異例の展開となった。市場とのコミュニケーションを「事前予告型」に変えていくのかとの質問に対し、植田総裁は、氷見野副総裁の講演を決定会合前にセットしたのはボードメンバーの発言機会の平準化の一環であり「各会合でそれまでに得られたデータをきちんとみて、それに応じて金融政策を変更することが適当かどうか議論するという基本線を改めてリマインドした」と説明した。