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アングル:トランプ取引の陰で存在感、日本の個人マネー 恒常的な円安圧力

2025年01月16日(木)16時17分

 1月16日、米債売り/ドル買いのトランプ取引の裏で、日本の個人マネーの動向が存在感を高めている。写真は円紙幣と日本国旗のイメージ。2017年6月撮影(2025年 ロイター/Thomas White)

Shinji Kitamura

[東京 16日 ロイター] - 米債売り/ドル買いのトランプ取引の裏で、日本の個人マネーの動向が存在感を高めている。新NISA(少額投資非課税制度)への資金流入が過去最高ペースで加速中で、個人の対外投資が勢いづいている。

円は現在、日銀の利上げ観測の高まりを受けて底堅い展開となっているが、継続的な利上げは見込みづらいこともあり、「新NISAの円売り」が再び恒常的な円安圧力として意識されそうだ。

<年始1週間で8000億円、倍のペース>

円安の手掛かりが、年始早々から浮上した。新NISAを経由した個人投資家の円売り圧力の再増勢だ。

新NISAは特に、短期筋の間で注目度が高い。普段は海外時間に活発となる巨額マネーの動きをにらみながら売買することの多い短期筋だが、新NISAは国内投資家が動きの鍵を担っているため、日本時間の日中に為替関連の売買が遂行される可能性があり、それを先読みできれば、貴重な収益機会となるためだ。

大手証券関係者によると、投資対象に海外資産を含む投信の約定日は申し込みの翌営業日で、販売会社から運用機関へ資金が移動するのは、約定日の翌営業日。つまり「月初に買い付けられた投信が、為替を含めて対外投資を実行するのは、月初から2営業日目となる可能性が高い」という。

実際、ドル/円が今年最初の高値をつけたのは、月初から2営業日後にあたる8日。一時158円半ばまで上昇して、半年ぶり高値を更新した。市場ではその前日から、新NISA関連の円売りが出ている、との思惑が出回っていた。

バンク・オブ・アメリカの主席日本為替金利ストラテジスト、山田修輔氏の推計によると、新NISAに関連する外国証券ファンド900本超への新規資金流入額は、今月10日時点で約7890億円と、新NISAが導入された昨年1月の同期間の倍近くと猛烈なペースで増加している。

山田氏はその要因を、上限となる年間投資枠が年明けに再設定されたことだが、投資家層の着実な拡大も背景にあると指摘する。「制度導入直後の昨年実績を上回る大幅な伸びとなったことは興味深い。この勢いが続くわけではないだろうが、実質金利マイナスの円に対する信認は低下しており、円建て現預金が海外資産へ分散される流れは続くだろう」とみる。

日銀の利上げ観測の高まりを受けて、足元でドルは155円前半まで軟化したものの、円が明確に反転したとは言い難い。

みずほ証券チーフ為替ストラテジストの⼭本雅⽂氏は「(1月に利上げがあったとしても)次は7月前後とみられ、そのペースは半年に一度程度。トランプ政権の出足にもよるが、円は1月会合後に反落するリスクもある」という。

予見可能性の低いトランプ政策に市場が翻弄される中、今年は昨年以上に個人の実需マネーが意識される局面もありそうだ。

(基太村真司 編集:橋本浩)

ロイター
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