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米雇用、7月11.4万人増で予想下回る 失業率上昇 大幅利下げ観測台頭

2024年08月03日(土)03時39分

米労働省が2日発表した7月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比11万4000人増となり予想を下回った一方、失業率は4.3%に上昇した。求人を示すサイン、マサチューセッツ州で2022年撮影。(2024年 ロイター/Brian Snyder/File Photo)

Lucia Mutikani

[ワシントン 2日 ロイター] - 米労働省が2日発表した7月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比11万4000人増となり予想を下回った。失業率は2021年9月以来約3年ぶりの高水準となる4.3%に上昇。労働市場の悪化や景気後退への懸念が高まる可能性がある。

7月は平均賃金の前年比での伸びが約3ぶりの低水準となった。米連邦準備理事会(FRB)が9月の次回会合で利下げに動く強い根拠になるとみられる。

<9月の大幅利下げ観測高まる>

LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は「労働市場の状況は景気減速と一致しているものの、必ずしも景気後退ではない」と指摘。ただ「一段と弱体化する兆候も出ているため、年内3回の利下げが実施されるとの観測が市場で織り込まれる可能性がある」と述べた。

特に失業率が約3年ぶりの水準に上昇したことを受け、FRBが9月の次回会合で0.50%ポイントの利下げを決定するとの観測が台頭。FRBは「後手に回っている」との見方も出ている。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)証券などの一部金融機関は、利下げが実施される時期の予想を12月から9月にへ前倒ししたほか、ゴールドマン・サックスは年内利下げの回数の予想を2回から3回に引き上げた。

FRBは7月30─31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きを決定。ボストン大学のブライアン・ベスーン教授(経済学)は「FRB当局者が7月の雇用統計の内容を知っていたら、7月会合で0.25%ポイントの利下げを決定していたはずだ」とし、「引き締め的な金融政策を維持する正当な理由は全くない」と述べた。

<失業率上昇、賃金の伸び鈍化> 

失業率は6月は4.1%だった。上昇は4カ月連続。2023年4月には3.4%と、約50年ぶりの低水準を付けていた。

時間当たり平均賃金は前月比0.2%上昇、6月は0.3%上昇だった。前年比は3.6%上昇で21年5月以来の低い伸び。6月は3.8%上昇だった。上昇率3.0─3.5%でFRBのインフレ目標2%に一致するとされており、9月の利下げは確実とみられている。

非農業部門雇用者数のエコノミスト予想は17万5000人増(レンジ7万-22万5000人増)だった。6月は20万6000人増から17万9000人増に下方修正された。

統計調査の週にはハリケーン「ベリル」の影響でテキサス州やルイジアナ州で停電があり、これが予想を下回る雇用増につながった可能性がある。

家計調査によると、7月は悪天候のため43万6000人が出勤できなかった。7月としては過去最多となる。週平均労働時間は34.2時間と、6月の34.3時間から減少しており、ハリケーン「ベリル」の影響とみられる。

業種別の雇用は、ヘルスケアが5万5000人増、建設が2万50000人増。レジャー・接客が2万3000人増加したほか、政府も1万7000人増加。運輸・倉庫、社会扶助も増加した。

一方、情報は2万人減少。金融と専門・ビジネスサービスも減少した。将来的な雇用の行方を示すとされる人材派遣は8700人減少した。

<雇用増のすそ野縮小>

雇用増のすそ野は引き続き縮小し、雇用増を報告した業種は全体の49.6%。6月は56.0%だった。

労働市場参加者は約42万人増加したものの、家計調査に基づく雇用増は6万7000人にとどまった。

経済的な理由からパートタイムで働く人の数は34万6000人増の460万人。働く意思があるものの就職活動をあきらめた人や、フルタイムの仕事が見つからずパートタイムで働いている人などを含む、より広範な失業率は7.8%に上昇。これまで3カ月連続で7.4%にとどまっていた。

労働参加率は62.7%。6月は62.6%だった。

ロイター
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