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見通しの「確度」高まる前に緩和度合い調整との声も=4月日銀会合

2024年06月19日(水)11時37分

日銀が4月25―26日に開催した金融政策決定会合では、先行きの政策運営について、経済・物価見通しの確度が十分に高くなる前から、経済・物価・金融情勢に応じて「緩やかな利上げにより緩和度合いを調整することも考えられる」との指摘が1人の委員から出ていたことが明らかになった。写真は日銀の建物。都内で2009年3月撮影(2024年 ロイター/Yuriko Nakao)

Takahiko Wada

[東京 19日 ロイター] - 日銀が4月25―26日に開催した金融政策決定会合では、先行きの政策運営について、経済・物価見通しの確度が十分に高くなる前から、経済・物価・金融情勢に応じて「緩やかな利上げにより緩和度合いを調整することも考えられる」との指摘が1人の委員から出ていたことが明らかになった。国債買い入れについては、1人の委員が市場の予見可能性を高める観点から減額の方向性を示していくことが重要だと述べていた。

一方で、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の扱いについては、時間をかけて検討していく必要があるとの認識を委員が共有したことが分かった。

日銀が19日、4月の決定会合の議事要旨を公表した。

4月会合では、3月会合での金融政策の枠組み見直しについて、何人かの委員が「市場に混乱なく受け入れられている」との見解を示した。先行きの政策運営については今後の経済・物価・金融情勢次第との見解で一致。何人かの委員は「為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の1つだ」と指摘、「経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金融政策上の対応が必要になる」との考えを示した。

ある委員は、現在の経済・物価見通しが実現すれば約2年後に物価目標が持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスになると指摘。「金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」と述べた。1人の委員は「円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある」と指摘した。

<円安、中長期的には基調物価上振れとの声も>

決定会合では、円安などが物価に及ぼすリスクについても議論された。

ある委員は、円安と原油価格上昇が「コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めている」と指摘。企業の賃金・価格設定行動の変化も踏まえると「円安・原油高が物価、さらには賃金に波及するタイムラグが短くなっている可能性がある」と述べた。1人の委員は、企業の行動変化を受けて円安の転嫁の度合いが高まっているとし「物価や賃金への影響が一時的なものにとどまらない可能性もある」と話した。

別の1人の委員は、円安と原油価格上昇が輸入物価を通じて企業物価に波及しつつあり、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて「現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要がある」と指摘した。

このほか、円安は短期的にはコストプッシュ型の物価上昇によって経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業における生産拠点の国内回帰などを通じ「中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得る」との意見も1人の委員から出された。

<ETFの扱い、検討は「時間かけて」>

国債買い入れを巡っては、7月の決定会合で今後1―2年程度の減額計画を決めることを6月13―14日の決定会合で決めた。

4月会合では、何人かの委員が「どこかで削減の方向性を示すのが良い」と話した。ある委員は、国債保有量や準備預金残高の適正化の観点から、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要があると指摘。段階的なイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化が円滑な出口につながったことも踏まえれば、国債買い入れの減額も「市場動向や国債需給を見ながら、機を捉えて進めていくことが大切だ」と述べた。

何人かの委員は、現在の買い入れ方針の下でも「国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において丁寧に行うことになる」との見解を示した。

ETFやREITの取り扱いを巡っては、5月9日に公表された4月会合の「主な意見」で、市場動向を踏まえると「具体的議論ができる環境になりつつある」との意見が掲載されていた。議事要旨では、ボードメンバーが時間をかけて検討を進めることで合意し、具体的な議論が可能な環境になりつつあると主張したのは1人の委員だったことが判明した。

ロイター
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