ニュース速報
ビジネス
アングル:米マンハッタンのオフィス市場、コロナ終息後も低迷

7月12日、 新型コロナウイルスのパンデミックは終息したが、米ニューヨークの中心部マンハッタンのオフィス市場は低迷が続いている。マンハッタンの超高層ビルサミット・ワンバンダービルトで4月撮影(2023年 ロイター/Mike Segar)
[ニューヨーク 12日 ロイター] - 新型コロナウイルスのパンデミックは終息したが、米ニューヨークの中心部マンハッタンのオフィス市場は低迷が続いている。空室は常態化し、市内のオフィスビルの45%で、現在の価値が直近の売却価格を下回っているとの推計もある。
ロイターが収集した不動産仲介業者のデータによると、第2・四半期の賃貸面積は前年同期比で50%近く、パンデミック前の5年間平均からは25%減った。
賃貸料は下がらず、高級物件では跳ね上がってはいる。しかしオフィスビルの販売不振からは、オフィス市場が在宅勤務で激変し、投資が消極化している様子が読み取れる。
ネルソン・エコノミクスの不動産エコノミスト、アンドルー・ネルソン氏は、「現状ではオフィスビル市場は事実上、存在しないようなものだ。底値がどこか誰も分からないからだ」と話す。
高級物件の高額スペースに対する需要は旺盛だが、それ以外は全て「空室がどんどん増えている」という。「スローモーションで進む大惨事のようなもので、回復には何年もかかるだろう」
ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)のアンドルー・リム調査部長によると、過去の景気サイクルと異なり、オフィス市場は3年余りも低迷したのに、まだ調整が終わらない。不要なオフィススペースを市場から一掃して価格上昇に寄与してくれそうな、目ざとい投資家も様子見を続けているという。
JLLによると、第2・四半期にマンハッタンのビルでローンの残額が市場評価額を上回った物件の数は112棟、3340万平方フィートで、前期の73棟、1510万平方フィートから増加した。
ニューヨークでは過去数十年で最大の建設ブームとリノベーションによって潤沢な供給が維持され、賃貸物件を求めるテナントにとって有利な状況が続く。リノベーションのコストは1億ドルを超えることが珍しくない。
不動産仲介会社CBREグループによると、事務所スペース賃借需要の強さを示す「ネットアブソープション(実質賃貸契約面積)」は供給過剰を示すマイナスだ。マンハッタンでは足元、オフィス勤務がパンデミック前の水準を上回ったにもかかわらず、ネットアブソープションはマイナスの度合いが拡大している。
JLLのリポートによると、賃貸面積は昨年第2・四半期から46.7%減少し、四半期ベースでは2021年の第1・四半期以来の低水準となった。
しかし不動産大手サビルズによると、マンハッタンですぐに利用可能なオフィス面積は現在7030万平方フィートと過去最高だ。
ネルソン氏は、「住居への転用が話題に上っている。確かに部分的には可能だが、可能性が誇張されすぎている」と述べた。
家主は募集ベースの賃料を上げるため、コンセッション(1カ月間無料にしたり、各種の費用を負担するなどの特典)を増やしている。賃料自体はパンデミック期間中も安定していた。
テナントのオフィス修繕費用を賄うなどのコンセッションを計算に入れた実質有効賃料は、高級物件の場合、2020年の1平方フィート当たり53ドルが今年は同106ドルに倍増した。しかし老朽化した「Bクラス」のビルのオフィススペースの実質有効賃料はパンデミック期に48ドルから50ドルへと小幅な上昇にとどまり、高級物件とそれ以下の物件の間で需要の二極化が起きている。
(Herbert Lash記者)