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アングル:暗号資産企業へのVC投資、過去最高の勢い 相場下落どこ吹く風

2022年07月29日(金)15時05分

 暗号資産(仮想通貨)が冬の時代を迎えているのを尻目に、ベンチャーキャピタル(VC)はデジタル通貨やブロックチェーン技術に携わるスタートアップ企業への投資をかえって積極化している。写真はイメージ。2021年1月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

[26日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)が冬の時代を迎えているのを尻目に、ベンチャーキャピタル(VC)はデジタル通貨やブロックチェーン技術に携わるスタートアップ企業への投資をかえって積極化している。

ピッチブックのデータによると、今年上期のこうしたVC投資は175億ドルに達した。ビットコインなどの仮想通貨が好調だった昨年は、通年で269億ドルと過去最高を記録したが、今年のペースはこれをも上回る勢いだ。

香港の投資企業レムニスキャップの創設者ロデリク・ファン・デル・グラフ氏は「現在の市場環境を見て投資家が動揺しているとは思わない」とし、「投資できる資金は豊富にある」と付け加えた。

VCは将来有望と考える若い企業に投資する。暗号資産業界はここ半年間辛酸をなめてきたが、ピッチブックのデータからは、VCが将来の暗号資産・ブロックチェーン技術に確固とした信頼を寄せていることがうかがえる。

今年の暗号資産業界はマクロ経済環境の逆風と、主要プロジェクトの失敗という二重苦に見舞われている。ビットコイン価格は昨年11月に付けた過去最高値の6万9000ドルから約65%も下落。仮想通貨市場全体の時価総額は1兆ドルと、年初の3分の1に縮小した。

相場急落は関連企業を揺るがし、主要仮想通貨交換所の米コインベース・グローバルや、NFT(複製不能なデジタル資産の非代替性トークン)プラットフォームを運営するオープンシーなどが大規模な人員削減に追い込まれた。

一部のVCはそんな惨状を物ともせず、多額の軍資金を業界に投資している。

とはいえ、すべての投資家が強気を保っているわけではない。暗号資産運用企業、米ウェーブ・ファイナンシャルのデービッド・シーマー最高経営責任者(CEO)は、暗号資産企業の価値高騰に揺り戻しの兆しがあると指摘。「もっともっと下がるだろう。この相場サイクルが始まってまだ数カ月だ。前回のサイクルでは、資金調達を望む企業の苦境は約1年間続いた」と述べた。

<中心地は米国>

長らくVCの中心地だった北米が、今回もまた主役となっている。今年上期の暗号資産関連スタートアップへの投資額は約114億ドルと、昨年1年間の156億ドルに近づきつつある。

これは米国のVC投資全般と好対照だ。マクロ環境の悪さと金融市場の波乱を背景に、上期のVC投資総額は1442億ドルと、前年同期の1582億ドルから減少した。

米国の主要な暗号資産投資企業、デジタル・カレンシー・グループのルミ・モラレス氏は、こうしたデータが暗号資産とブロックチェーンへの信頼感の高まりを示していると指摘。「この業界全体が消えてしまうのではないか、などという存亡の危機がかつて語られていたが、すべては空想だった。もはやそうした状況ではない」と言い切った。

暗号資産を投資手段として採用する動きは、昨年大きく広がった。ブロックチェーンの利用も根付いてきている。もっとも、金融やコモディティーなどの業界に革命をもたらすという約束はいまだに実現していない。

上期にVCからの大型投資を取り付けた米暗号資産企業は、暗号資産交換所FTCの米国部門(4億ドル)、ブロックチェーン開発企業コンセンシス(4億5000万ドル)、ステーブルコイン発行企業サークル(4億ドル)など。

欧州でもこうした投資は活発で、上期の総額は22億ドルだった。

(Tom Wilson記者、 Medha Singh記者、Lisa Pauline Mattackal記者)

ロイター
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