ニュース速報

ビジネス

FRB量的引き締め、今回は米国債市場への打撃に懸念=地区連銀論文

2022年07月15日(金)16時28分

米連邦準備理事会(FRB)のアトランタ地区連銀とカンザスシティ地区連銀のスタッフがそれぞれ「量的引き締め」を取り上げた論文を発表した。写真は1月26日、ワシントンで撮影(2022年 ロイター/Joshua Roberts)

[ワシントン 14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のアトランタ地区連銀とカンザスシティ地区連銀のスタッフがそれぞれ「量的引き締め」を取り上げた論文を発表した。現在は過去の類似局面に比べて経済の不確実性が高い上、FRBの利上げも侵攻。米国債市場のこうした圧迫状況下で、コロナ禍対応の証券買い入れで膨らんだバランスシート縮小に動く場合、金融市場への影響が増幅されてFRBの取り組みが難しくなる恐れがあると警告している。

アトランタ連銀のビン・ウェイ氏は、「通常局面」でFRBが3年かけて約2兆2000億ドル分の米国債保有を減らす場合、フェデラルファンド(FF)金利への直接の上昇圧力は約29ベーシスポイント(bp)相当と分析。しかし、ボラティリティーやストレスが高い局面では74bp相当の上昇圧力がかかると試算した。FRBが通常は25bpずつ利上げしてくことを考えれば3回分の打撃に匹敵し、FRBが想定する以上の金融引き締めをもたらす恐れがあるとした。

カンザスシティ連銀のラジディープ・セングプタ氏とA・リー・スミス氏は、2007-09年の世界金融危機を受けてFRBが購入した証券を17年の「市場が静かだった時期」に、償還で再投資せずポートフォリオから外していった事例に言及。現在の不安定な市場と比較研究した。

それによると、現在は米国債の主要顧客である年金基金や投資信託などの米国債保有が既に記録的な量に近い。政府が債務借り換えで発行しなければならない新発債を「吸収する余力」が限られている可能性を指摘した。現在の世界の地政学的リスクを考えれば、安全な逃避先であるはずの米国債への海外勢需要も限定的になるかもしれないとした。

今回は米国債利回りが下がり、ドルが強くなっているとは言え、どの尺度で見ても不確実性は高く、FRBのバランスシート縮小に伴うリスクはコロナ禍前に比べ大きいという。米国債の買い手が減れば、それは金利が想定以上に上がることを意味するとも警告した。17年の量的引き締めよりも今回は、はるかに市場の混乱が大きくなる可能性があるとしている。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネットフリックス、第2四半期見通し強気 広告付きサ

ビジネス

トランプ氏の保護主義でドル・米国債投資縮小に妥当性

ビジネス

IMF専務理事、米中は公正でルールに基づいた貿易体

ビジネス

トルコ中銀が3.5%利上げ、わずか4カ月で予想外の
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 5
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 10
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中