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アングル:インバウンド蒸発の関西経済、地銀の健全性に逆風

2020年07月31日(金)10時00分

 新型コロナウイルスの感染拡大で、外国人に人気でインバウンドの恩恵を受けてきた関西圏はとりわけ大きな打撃を受けた。写真は関西国際空港で3月撮影(2020年 ロイター/Edgard Garrido)

和田崇彦 木原麗花

[大阪/京都 31日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大で、外国人に人気でインバウンドの恩恵を受けてきた関西圏はとりわけ大きな打撃を受けた。地元の銀行は苦境に陥る観光業などの資金繰り支援に全力を挙げるが、コロナの影響が長期化すれば、倒産が急増し、地方銀行の財務健全性が揺らぐリスクもある。政府は金融機関に公的資金を注入しやすくする法改正を実施。融資で企業を守り抜くことで、金融システム不安の回避を狙う。

<最大のコロナ倒産は大阪の観光業>

関西はここ10年近くインバウンドで盛り上がってきた。ここは支えないと――。関西みらいフィナンシャルグループ<7321.T>の菅哲哉社長はロイターのインタビューでこう述べた。

インタビューの直後、大阪経済の苦境を示すニュースが飛び込んできた。6月30日、関西みらい傘下のみなと銀行の取引先である旅行業のホワイト・ベアーファミリー(本社=大阪市北区)が大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請。負債総額は278億円で、コロナ関連倒産では最大となった。

みなと銀は12億3700万円の貸出金のうち、担保などで保全されていない8億円について今年度第1四半期に全額引き当て処理する。もっとも、関西みらいの今期の与信費用は125億円。業績目標は変更しなかった。菅社長はインタビューで与信費用について「予防的な置き方をしており、現時点で(実際の費用が予想を)超えるとは思っていない」と説明した。

<ホテル業界は「悲惨な状況」>

心斎橋にあるホテル日航大阪の呉服弘晶総支配人は「大阪のホテル業界は悲惨な状況だ」と話す。呉服氏によると、大阪市内のホテル客室数は15年の5万室から20年には9万室まで急増。供給過剰にコロナ禍が重なり、経営環境は急速に悪化した。

都道府県別で見た19年の訪日外国人観光客の宿泊数では大阪府が2位、京都府が5位。京都市内のホテル・旅館は6月末時点で664と、15年度末比で24.8%増えた。京都駅周辺にはここ1―2年で開業したホテルが目立つ。

京都銀行<8369.T>の土井伸宏頭取は「インバウンドが戻るにはあと2―3年はかかるだろう」と話す一方、国内観光客の戻りに期待感を示した。「(観光関連の)器が大きくなり過ぎたので、ある程度小さくしないといけないかもしれないが、戦略や工夫次第では新しいビジネスが可能だ。再生のチャンスは他の都市よりはあると思う」と語った。

<コロナ長期化への懸念>

コロナの感染拡大が経済に与える悪影響を抑えるため、日銀は3月以降、企業の資金繰り支援策などを矢継ぎ早に打ち出し、倒産件数が抑えられるなど効果が出ている。倒産件数が抑えられたことで「4―6月期の通過段階で与信費用を積み増す地銀はあまりいないのではないか」(アナリスト)との声も出ている。

しかしコロナの影響が長期化し、倒産が増えれば、資金需要がひっ迫しやすい年末に向けて金融システム不安が高まりかねないと懸念する声もある。日銀内では、中間決算時の与信費用見直しに注目する向きがある。

金融庁内では、コロナの影響がどの程度長引くか見通しにくいことで地銀の財務健全性への影響も読みづらいとの声が出ている。

<地銀の健全性は大丈夫か>  金融庁も日銀も、現時点で日本の金融システムは安定しており、金融機関の健全性に問題はないとの見方で一致している。金融庁が集計した地方銀行(国内基準行)92行の自己資本比率は20年3月期時点で9.52%と、最低限必要な4%の2倍超だ。

金融庁は金融機関に対し、資金繰り支援を徹底するよう再三要請している。銀行がリスクを負わない信用保証付きの無利子・無担保融資に偏重しないよう、プロパー融資の実態調査を行う。補正予算に盛り込まれた信用保証付き無利子・無担保融資に当てはまらない融資のパターンも多く、同庁内では金融機関は借り手の要望に柔軟に応じていくべきだとの声が出ている。

さらに、金融機関に公的資金を注入するための金融機能強化法の申請期限を延長。公的資金の注入を受けても、経営者責任を問わない、収益性などで数値目標を課さないといった東日本大震災時と同様の特例を設けた。金融庁内では、自行の財務基盤が心配で企業の資金繰り支援をためらうなら、公的資金の注入を申請するのが望ましいとの声が出ている。

<倒産件数、秋口に急増の可能性>

心斎橋を見ていってください。中国からの観光客でいっぱいですから――。昨年末、大阪の地銀関係者はこう話し、インバウンドに沸く大阪を熱く語った。カジノ構想、大阪万博など大型のビジネス機会もあり、隣接府県から地銀が営業攻勢を強めていた。しかし、コロナ流行で状況は一変した。

東京商工リサーチ・関西支社によると、7月度の大阪府の倒産件数は前年同月の98件を上回った。情報部の新田善彦氏は「今後、感染拡大が長引くようであれば、今回の金融支援策の効果も得られなくなり、2―3カ月の運転資金として借り入れしていた資金が尽きたころにさらに倒産が増加するリスクがある」と指摘。「断定はできないが、秋口頃から一気に増加する可能性がある」とみている。

関西の地銀の正念場はこれからだ。

(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)

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