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武田薬、シャイアー買収で合意 生き残り賭けた7兆円の巨額買収

2018年05月08日(火)22時56分

 5月8日、武田薬品工業は、アイルランド製薬大手シャイアーの買収で合意したと発表。写真は都内で4月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

[東京 8日 ロイター] - 武田薬品工業<4502.T>は8日、アイルランド製薬大手シャイアーの買収で合意したと発表した。買収総額は約460億ポンド(約6兆8000億円)にのぼり、実現すれば、ソフトバンクグループ <9984.T>による英ARMホールディングス買収を抜き、日本企業による過去最高額の買収案件となる。これにより、売上高は、日本の製薬企業として初めて世界トップ10入りを果たす。世界市場での生き残りを賭けた巨額買収となるが、柱となる新薬開発にうまく結び付けられるかは不透明だ。

クリストフ・ウェバー社長・CEO(最高経営責任者)は電話会議で「コストカットがメーンではない。両社が一緒になってより強くなれる。競争力を強化するためにはグローバルなプレゼンスが必要」と述べた。今回の買収で後期開発段階にある新薬のパイプラインが強化されるほか、収益性の高い米国での売上比率が高まる。しかし、本社は日本に置くと明言した。また、人員削減の可能性はあるものの、現時点で、その規模は言えないとした。

両社が同日締結した契約によると、シャイアーの株主に対してシャイアー株1株につき現金30.33米ドルおよび武田薬の新株0.839株または米国預託株式(ADS)1.678株のいずれかを割り当てる。

武田は今年3月28日に買収検討を表明。その後、金額を引き上げながら5回の提案を行い、4月24日に、1株49.01ポンドで暫定合意していた。

シャイアーの取締役会は全会一致で株主に賛成票を投じるように推奨することを決定。また、武田の取締役会も、新株発行を承認するための臨時株主総会において、賛成の投票を行うように推奨する方針を全会一致で決めた。今後は、両社の株主から賛成を得られるかどうかが焦点となる。買収は、2019年上期(1―6月期)に完了する予定。

武田は、消化器系疾患、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経性心疾患)の3つの重点領域とワクチンの4領域で新薬開発に注力している。がんについては、昨年、米アリアド・ファーマシューティカルズを約6100億円で買収。シャイアーは、消化器系疾患とニューロサイエンスの強化に資する。さらには、希少疾患と血液から作られる「血液製剤」のひとつである血漿分画製剤でもリーディングカンパニーとなるとしている。

シャイアーはパイプラインの3分の1が臨床後期段階にあり、武田の脆弱と言われるパイプライン強化につながる。

両社の売上高を単純合算すると、約3兆4000億円規模となる。地理的には、売上高に占める米国の比率が48%(武田は34%)に高まる一方、日本が19%(同34%)に低下する。

武田の18年3月期の売上高計画は1兆7450億円。今回の買収には、この4倍の資金をつぎ込む。武田によると、今回の買収を完了した後、3事業年度の年末までに、少なくとも年間14億ドルのコストシナジーを生み出せるという。また、買収実施でも「確固たる配当方針、投資適格格付けを維持する」としており、年180円の配当を維持するほか、純有利子負債/EBITDA倍率を中期的には2.0倍以下にすることを目指す。

ウェバーCEOは、今後のM&Aについて聞かれ、「今後数年間は、統合して効率的な組織を作り、純有利子負債/EBITDA倍率を2.0倍以下にすることが優先事項」と述べた。

武田はまた、シャイアー買収に向け、JPモルガン・チェース、三井住友銀行、三菱UFJ銀行との間で308.5億米ドル(約3兆3600億円)のブリッジローン契約を結んだことも明らかにした。資金の一部は、シャイアー社株主に支払う現金対価やその他関連する費用などに充当する。

*情報を追加しました。

(清水律子 )

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