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焦点:日銀、円高・株安を注視 長期金利大幅低下で緩和効果波及の声

2016年07月06日(水)19時33分

 7月6日、東京市場でドル/円が100円台に下落し、日経平均も一時前日比500円超下落してリスク回避行動が先鋭化した。2013年2月撮影(2016年 ロイター/Shohei Miyano/Illustration/File Photo)

[東京 6日 ロイター] - 6日の東京市場でドル/円が100円台に下落し、日経平均も一時前日比500円超下落してリスク回避行動が先鋭化した。英国の欧州連合(EU)離脱決定後にいったん鎮静化していた欧州市場の不安再燃が要因だが、日銀は今後の動向を冷静に見極める構え。

さらに円高・株安が進めば、経済・物価への深刻な影響が出かねないと警戒する声が日銀内にある一方、すでに長期金利がマイナス0.275%まで低下し、追加緩和の効果が波及しているとの見方もある。日銀は今後の動向を注視しながら、難しい「手綱さばき」を強いられることになりそうだ。

<円高の一段志向、企業業績に悪影響>

今週は8日の米雇用統計発表まで「様子見相場」が続くとみられていたが、英国の不動産ファンドの解約停止をきっかけにポンド/ドルが急落し、イタリア系銀行の不良債権問題にもスポットが当たって、欧州金融システムに関する不安が一気に台頭した。

ただ、日銀内では債務問題が金融システム不安に直結したリーマン・ショックのような危機的な事態には陥らないとの見方が支配的で、世界経済への短期的な影響は大きくないとみている。

それでも、100円割れをうかがうまで円高が進行しており、この水準が継続するなら、企業収益の圧迫を通じた実体経済への悪影響が懸念されるとの声もある。

また、日銀ウオッチャーの多くは、円高による輸入物価の押し下げ効果などで、2017年度中に消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)が2%に達するとの見通しも先送りが避けられないと判断している。

日銀は今月公表予定の国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し改定なども踏まえ、日本の経済・物価の分析を進める。

現状では、世界経済の緩やかな回復基調に大きな変化がないとの前提に立ち、急激なリスク回避の動きも次第に収束に向かうと期待感を持ちつつ、注視するスタンスを維持している。

<長期金利の下がり過ぎ、銀行経営に打撃も>

もう1つ、日銀の政策判断に影響しそうなのが、足元で急速に進行する長期・超長期金利の低下だ。

日銀が1月に導入を決めたマイナス金利政策は、設備投資コストの低下による需要拡大を通じて実体経済に刺激を与え、内外金利差拡大による反射的効果としての円安進行などが期待されてきた。

年間80兆円の国債買い入れが、今後2─3年で限界に突き当たるとの市場の「政策限界懸念」の払しょくを狙った面もある。

しかし、実際には日銀の想定を上回るペースで長期ゾーンや超長期ゾーンの金利低下が進み、利回り曲線の平たん化は初めて経験するほどに進んだ。

日銀内には、マイナス金利政策の効果が浸透し、長期金利が低下していると受け止める見方がある一方、「利回り曲線がこれほどつぶれるとは思わなかった」との声も出ている。

利回り曲線の平たん化が進展し過ぎると、金融機関の利ざやを圧縮し、期間収益の下押し要因として市場に意識されかねないという副作用もある。

日銀は3月以降、金融調節で年限25年以上の超長期国債の月間買い入れ額を徐々に減額し、短い金利の引き下げと超長期金利の上昇を図りつつある。

だが、6日の東京市場では、イタリアの大手銀行の不良債権問題も加わり、銀行株は一時、日銀が量的・質的金融緩和(QQE)を導入する以前の水準に軒並み下落した。

市場関係者の一部には、仮に追加緩和が実行され、マイナス金利が深掘りされた場合、銀行株の下落が大きくなって株価全体の上昇効果が見込めない展開も予想されると話す。

日銀関係者の中には、追加緩和よりも金融調節の工夫で利回り曲線を立たせる方が効果的ではないかとの声もある。

(竹本能文、伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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