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アングル:CPI失速、日銀は原油下落で説明可能と静観スタンス

2015年03月27日(金)11時45分

 3月27日、2月消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)は、消費税引き上げの影響を除き前年比ゼロ%にとどまった。日銀が目標に掲げる2%への道のりは遠い。都内で2月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 27日 ロイター] - 2月消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)は、消費税引き上げの影響を除き前年比ゼロ%にとどまった。日銀が目標に掲げる2%への道のりは遠い。未曾有の国債買い入れで昨年4月には1.5%まで上昇した物価は、振り出しに戻った印象だ。だが、日銀は現時点で物価下落は昨年来の原油急落で説明可能として、静観のスタンスを維持している。

<4月以降もゼロ・マイナスなら物価の基調議論も>

日銀は2013年4月の「量的・質的金融緩和(QQE)」開始以降、2年で2%の目標達成を掲げてきた。

しかし、想定外だった原油安を踏まえ、今年1月の金融政策決定会合で、15年度のコアCPI見通しを1.7%から1.0%に引き下げた。原油価格が緩やかに上昇し、15年度後半には原油安の影響がはく落すると想定することで「15年度を中心とする期間に2%に達する」との見通しは堅持した。

公表された議事要旨によると、多くの審議委員は、原油価格が下落し物価上昇率が低下する現状でも、企業の経営者が賃上げに前向きな姿勢を示すなど「デフレマインドの転換は着実に進んでいる」と認識。追加緩和の是非などは「予想物価上昇率や、需給ギャップなどに規定される物価の基調に変化がないかを見極めながら判断する」としている。

日銀関係者らによると、3月までの物価がたとえマイナス圏に陥っても、原油安が主因との説明が可能と判断している声が多い。

一方、多くの財やサービスの価格改定や賃上げが予定されている4月以降も物価がゼロやマイナスの場合、物価の基調が議論になる可能性もあるのではないかという意見もある。

<15年度ベア上昇率、日銀想定より若干低め>

定量的に明確な指標のない物価の基調を推し量るため、日銀が重視しているのが賃金だ。大手企業が2年連続でベースアップを実現しつつあるのはポジティブな材料だが、15年度ベアの平均上昇率(0.56%、連合による25日までの集計)は、日銀の従来想定に比べるとやや低めにとどまっているもよう。

日銀が目指す安定的な2%目標を達成するには、形式的には毎年ベアが2%実現される必要があり、物価目標実現への道のりは、極めて遠いとの分析がBOJウオッチャーの中から出ている。

一方、人手不足で自動車業界の派遣賃金が底堅く推移するなど、賃金押上げ要因もある。物価をめぐる情勢判断は、幅広い材料を点検しながら議論を深めていくととなりそうだ。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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