ニュース速報

ビジネス

アングル:需要高まるユーロ圏のインフレ連動債、ECBのQE開始で

2015年03月16日(月)18時44分

 3月13日、欧州中央銀行(ECB)による1兆ユーロ規模の量的緩和(QE)始動で通貨安競争が加速するなか、この競争で「勝者」となるのはユーロ圏のインフレ連動債かもしれない。ユーロのシンボルマーク。2014年8月撮影(2015年 ロイター/Ralph Orlowski)

[ロンドン 13日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)による1兆ユーロ規模の量的緩和(QE)始動で通貨安競争が加速するなか、この競争で「勝者」となるのはユーロ圏のインフレ連動債かもしれない。

インフレと景気の押し上げを狙ったQEの開始を見込んで、ここ一カ月でインフレ連動債の需要は高まった。この需要の高まりによって、国債利回りと連動債の「実質」利回りの差で、インフレ期待を示すとされる「ブレークイーブンレート」は上昇している。ただ、ECBのインフレ目標である2%近くの水準にはまだ届いていない。

例えば、フランス10年物国債のブレークイーブンレートは約1.37%と、2月初めにつけた約1%から上昇している。

アナリストの多くは、ECBの債券買い入れがユーロを押し下げインフレ率を上昇させる中、連動債への需要はさらに高まるとの見方を示している。

ECBのQE開始以降、ユーロは対ドルでの等価(パリティー)に向けて下落を続けている。昨年5月以来の対ドル下落率は約25%。ECBのQEが加速し米連邦準備理事会(FRB)の利上げが近づくにつれ、ユーロは向こう数カ月で等価を割り込むと多くのアナリストはみている。

ユーロの下落は輸入製品を割高にさせ、一部のアナリストは向こう12─18カ月で物価は0.5─0.7%上昇すると予想している。

大まかな計算では、ユーロの実効為替レートが10%下がればインフレは0.4─0.5%ポイント上昇することになる。ECBがQEを発表した1月22日以来、ユーロの実効為替レートは5.25%下落している。

アクサ・インベストメント・マネジメントでインフレ連動債ファンドを担当するジョナサン・バルトラ氏は「ユーロは向こう一年間の通貨安競争で勝者になることが予想されている。ユーロのインフレ連動債は高い価値がある」と指摘した。

アクサのインフレ連動債ファンドは、昨年の原油安の影響をヘッジするためこれまでは最大15%まで国債を投資対象に含めていたが、今月に入って連動債のみの投資に変更した。

<注目はイタリアとスペイン>

バルトラ氏は、ドイツとフランスのインフレ連動債に比べ、より高い利益をもたらす可能性のあるイタリアとスペインのインフレ連動債への投資を選好すると述べている。同氏はまた、スペイン・イタリアのインフレ連動債は、利回りが過去最低を記録した国債と比較しても魅力的だとしている。

イタリアのインフレ連動債は、3月31日からバークレイズの債券指数「世界物価連動国債(WGILB)」と「ユーロ圏物価連動国債(EGILB)」に採用される予定で、これも需要の押し上げ要因になっている。またバークレイズが最低格付け基準を「A3/A-」から「Baa3/BBB-」に変更したことを受け、スペインも同指数に含まれる見通しだ。

原油価格が安定する中、これまで連動債を購入してこなかった投資家も市場に参入している。

シティのストラテジスト、ジェイミー・サール氏は「ユーロ安がインフレに影響を与え始めると確信しているが、市場はこの可能性を軽視している」と指摘。「われわれが予想した通りユーロは対ドルで等価に近づいており、これは現在続いているとされる通貨安競争によるところが大きい。明確にユーロ安を狙っているわけではないが、ECBが良い仕事をしているというサインだ」と述べた。

(Emelia Sithole-Matarise記者 翻訳:本田ももこ 編集:加藤京子)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル財界、ネタニヤフ首相に国防相交代見送り要

ワールド

カナダ補欠選挙で与党敗北、トルドー首相への辞任圧力

ワールド

欧州委の委員候補発表、新設の防衛担当はリトアニアの

ビジネス

アングル:米債券市場、景気巡り見方割れる FOMC
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 2
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 3
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない」との研究が話題に...その仕組みとは?
  • 4
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 5
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 6
    原作の「改変」が見事に成功したドラマ『SHOGUN 将軍…
  • 7
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 10
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 9
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 5
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 6
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 9
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 10
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中