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米FOMC、早過ぎる利上げ懸念=議事要旨

2015年02月19日(木)07時54分

 2月18日、1月開催のFOMC議事要旨では、時期尚早な利上げは回復の腰を折りかねないとの懸念が出ていたことが分かった。写真は昨年12月のFOMC後に会見するイエレン議長。(2015年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は18日、1月27─28日分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表した。時期尚早な利上げは景気回復に水を差しかねないとの懸念が挙がり、金利の先行きを示すフォワードガイダンスの「忍耐強くいられる(patient)」との文言を削除した場合の影響が不安視された。

委員会は底堅い米経済と弱含む海外情勢についてどう考えるべきかを話し合った。中国経済の減速や中東やウクライナの不安定な情勢が、米経済の成長見通しにとって下振れリスクになると言及した。

米国のインフレ期待低下も不安視された。会合では、物価上昇率が依然として低い状態にあることが、利上げ開始の判断にどの程度影響するかを協議された。

2月上旬以来、米国債の利回りは上昇している。底堅い経済成長や労働市場を背景に利上げが6月にも始まると投資家が受け入れ始めていることを示している。

この日は、議事要旨の公表を受けて米国債の利回りは低下した。

プルデンシャル・フィクスト・インカムの上級投資責任者、グレッグ・ピーターズ氏は「議事要旨は想定よりかなりハト派的。個人的には6月に利上げを行うことは難しいとみているが、必ずないとはかぎらない。経済指標からは6月利上げの見通しは見えてこない」としている。

<インフレ指標はまちまち>

委員会は国内の経済成長が勢いを増してきているとの認識では一致しているが、インフレ期待が低下し国際情勢が混乱する中で利上げに踏み切っていいものか協議を続けている。

どの指数を見るかによってインフレ期待の動向は異なっており、それをどう見るかで議論が続いている。これについて、今回の議事要旨は「何人かの参加者はコア物価指数が依然弱含んでいることを懸念した」としている。

会合では、最近の物価下落は一時的としながらも、インフレ期待に関する異なった動きを「注視すべきだ」とし、FRBの2%物価目標達成への信認失墜の兆しに注意を払う必要があるとした。

フェニックス・ファイナンシャル・サービシズの首席市場アナリスト、ウェイン・カウフマン氏は「依然として経済にスラック(需給の緩み)が多くある。各国の中央銀行が金利を下げる中、FRBは逆行したくないのではないか。FRBは利上げに踏み切れるほど世界経済は底堅くないとみている」と述べる。

<「忍耐強い」を削除した場合の影響懸念>

FOMC終了後に公表された声明は、利上げまで「忍耐強くいられる」とし、一部のインフレ関連指標が低下したとの認識も示した。この点について、イエレン議長は昨年12月の記者会見で今後少なくとも2回のFOMCを開くまでは利上げに踏み切ることはないと説明した。

会合では「忍耐強くいられる(patient)」とした文言を削除した場合、利上げ時期の市場予想が「過度に狭い範囲」に絞り込まれてしまう恐れがあるとの指摘が出た。

利上げの開始時期は経済情勢次第との姿勢を維持。早い段階での利上げには慎重な声が挙がった。議事要旨は「多くの参加者は時期尚早の利上げが実体経済や労働市場の底堅い回復に水を差し、物価と雇用の目標水準までの進展を妨げかねない」としている。

議事要旨ではまた、参加者の多くが「FF金利をより長い期間にわたり、低水準に維持する」方向に傾いていることも明らかになった。

*内容を追加します。

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