ニュース速報

アングル:米政府、EV供給網構築へ5月に官民会議 リチウム業者も参加

2019年04月06日(土)07時26分

[5日 ロイター] - 米政府は国内の電気自動車(EV)の供給網構築に向けた取り組みの第1弾として、5月初旬に自動車メーカーのほか、電気自動車の電池に不可欠なレアメタル(希少金属)のリチウムを生産する企業を集めた会議を開催する。

複数の関係筋によると、ワシントンで開かれる会議には米電気自動車(EV)メーカーのテスラのほか、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)などの代表者が参加。このほか、中南米でリチウムを生産する米アルベマールと米リベントのほか、米国内でリチウム鉱床などを開発する企業も参加し、電気自動車に必要なリチウム、ニッケル、コバルト、グラファイトの採掘、加工、供給を包括する供給網の整備につながる政策について協議する。

米国ではテスラのほか独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)など電気自動車に軸足を置く自動車メーカーのほか、電池メーカーが新技術に大規模な投資を行っているが、生産に必要なレアメタルは輸入に頼っているのが現状だ。

一方、中国はすでに電気自動車の供給網を整備済み。5月の会議を主催するベンチマーク・ミネラルズ・インテリジェンスによると、リチウムイオン電池の生産で中国は世界の約3分の2を担っているのに対し、米国の生産は5%に過ぎない。また、米地質調査所(USGS)によると、米国のリチウム輸入はテスラなどが国内で電池生産を開始したことで2014年以降倍増した。

上院エネルギー・天然資源委員会メンバーのジョン・ホーベン議員(ノースダコタ州)はロイターに対し、「こうした資源は米国の国家安全保障、および経済にとって極めて重要であるため、国内の供給をより効果的に開発する方法を模索する必要がある」と述べた。

5月の会議には国務省、エネルギー省、内務省、米地質調査所の当局者も参加する見通し。上院エネルギー・天然資源委員会のリサ・マーカウスキー委員長も出席を予定しており、リチウムを含む鉱物を巡る認可プロセスの簡素化、州・連邦政府レベルでの重要な鉱物の研究促進などを目的とした法制度を提案する。

米国ではリチウム・アメリカス・コープ(LAC)を含む5社が現在、新技術を導入したリチウム採取プロジェクトを推進中。粘土や油田廃棄物などからリチウムを採取する新たな技術で、形勢を一転させる可能性があるとの見方を一部アナリストは示している。

これらの企業すべてが資金を確保できたわけではないが、計画通りに2022年までに開始できれば、米国の生産は炭酸リチウム換算で年間少なくとも7万7900トンに達し、世界でも有数のリチウム生産国に躍り出る。

リチウム関連の権利買い取りを行う新興企業のUSクリスタル・ミネラルズのジェシー・エドモンドソン最高経営責任者(CEO)は、「電気自動車の供給網の整備は、『米国を再び偉大にする(to make America great again)』目標の達成に向けた最適の手段となる」と語った。

現在、アーカンソー州ではスタンダード・リチウムが化学工場から出る臭素廃棄物からリチウムを採取する試験プロジェクトを開発中。同州のハッチンソン州知事はロイターに対し、「アーカンソー州はリチウム生産に向け大きな一歩を踏み出す機会に恵まれており、これを支援したい」と述べた。

リチウム・アメリカスのジョナサン・エバンズ社長は「米国が目を覚ましさえすれば、国内に電気自動車の供給網を構築する機会は存在する」と語る。同社は現在、ネバダ州でリチウムプロジェクトを進めており、22年の開始を予定している。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米卸売在庫、11月は0.2%減 速報値と変わらず

ビジネス

米新規失業保険申請は1万件減の20.1万件、11カ

ワールド

中国マネー、香港の投資ファンドに殺到 高金利の米国

ワールド

米オープンAIのアルトマンCEO、妹への性虐待疑惑
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    マクドナルド「多様性目標」を縮小へ...最高裁判決の…
  • 7
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 10
    日本の「人口減少」に海外注目...米誌が指摘した「深…
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 7
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 8
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 9
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中