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コラム
トバイアス・ハリス オブザーヴィング日本政治
社民離脱、運命の選挙力学
Yuriko Nakao-Reuters
5月28日、社民党党首の福島瑞穂・消費者担当相は、米軍普天間飛行場の沖縄県内移設をめぐる鳩山由紀夫首相の決定を最後まで拒否した。このため首相は福島を罷免せざるを得なかった。30日、社民党は予想どおり連立政権から離脱することを決めた。
それでも参議院選挙に向けた民主党との協力は可能だと社民党は示唆している。しかし、そもそも「反企業、反日米同盟」を標榜する同党が、生き残るために民主党と協力することが得策なのかどうか、疑問の声も上がっている。
選挙の力学からすると、衆議院で308議席(うち小選挙区221議席)を持つ民主党は、できるだけ多くの選挙区を制するために中道路線に近付いていくことになる。もし民主党と自民党が互いに似通っていくとすれば(自民党が存続するとして)、それは無党派層が左右する政治システムの中で、少しでも多くの浮動票を取り込むために中道寄りに動く必要が生じるからだ。互いを区別するために言葉やジェスチャーで取り繕うことになるだろう。
社民党は、まったく異なる状況に置かれている。衆議院ではわずか7議席(比例区4、小選挙区3)しかない。小選挙区3議席のうち1議席は沖縄2区選出の照屋寛徳だ。少数政党が生き残るためには、ごく限られた中心的(コア)な支持者に対してユニークな「何か」を提供するしかない。社民党にとってコアな支持者とは、在日米軍の削減を求め、憲法改正を拒み、不平等の拡大に抵抗するといった左派イデオロギーの信奉者たちだ。
■94年の「裏切り」は繰り返せない
理屈の上では民主党と社民党の間に協力の余地があるように見える。だが実際には、民主党にとって妥協が不可欠であるのに対し、社民党の生き残りは党の原則と公約をかたくなに守ることに掛かっている。
自民党が今のような体たらくに陥っていなければ、民主・社民の連立は「便利な敵」に共同で抵抗するためにもう少し維持できたかもしれない。だが連立の選挙力学からすると、この組み合わせは最初から無理があったように思える。
選挙力学は社民党の歴史によってかき乱された。94年、当時の社会党は自民党と連立政権を組むために、日米同盟と自衛隊に関する自党の原則を破るという、いわば自傷行為に走った。そんな選択をしたのは、選挙制度改革前に既に少数イデオロギー政党になりつつあったことを認識していなかったからかもしれない。
このように日米同盟をめぐってコアな支持者を1度裏切っているため、福島が今回取った行動と異なる行動を取る可能性は極めて低かった。
福島が鳩山首相の妥協を拒否せざるを得なかったのは、端的に言えば社民党の過去・現在・未来のためだ。同党の未来はそれでも危うい。連立から離脱したままでの選挙協力がどちらの党を利するかはまだ分からない。だが原則を堅持した社民党のほうが支持基盤を維持するのは容易だろう。
[日本時間2010年5月31日02時44分更新]
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