コラム

ボロボロ自民党、再生への道

2009年09月01日(火)17時33分

 自身の政治生命をかろうじてつなぎとめた自民党の中川秀直は、辞意を表明した麻生太郎の後任を選ぶ総裁選に出馬する意欲を明らかにした。中川といえば、7月に麻生降ろしの立役者となった人物だ。

 中川はけんかっぱやく、その意味で野党の党首向きといえる。だがそうした性格が党内で煙たがられてきたのも確か。彼と同じいわゆる「上げ潮派」の支持がどれだけ集まるか、まして地方党員票の行方を現時点で判断することは難しい。

 総裁選には、すでに出馬の意欲を示した石破茂や石原伸晃といった08年総裁選に立候補した面々に加え、参院議員の舛添要一も顔をそろえるだろう。今後、候補者はさらに増えていくはずだ。

 次の総裁が最初に直面する問題は崩壊した党を立て直すこと。その意味では、こうした面々の方が中川より望ましいと言える。とはいえ私は、今回の選挙で党が崩壊したと言っているのではない。

 自民党はイデオロギーや派閥、族議員などといった、非常に根本的な部分ですでに党内が分裂していた。新総裁に求められることは、党をトップダウン型で中央集権的な組織につくり直すことだ。

■政権奪還の道は必ずある

 新総裁は党の組織をつくり変えなければならない。民主党にならって総務会を「次の内閣」に、政務調査会は党のシンクタンクという位置づけにする。シンクタンクで重視するのは、これまで頼り切ってきた官僚ではなく民間の学者や研究者。新執行部に抵抗するであろう議員たち(たとえそれが重鎮だとしても)を従わせるため、3人の指導者によるトロイカ体制を敷いてもいいかもしれない。

 野党となった自民党は、数年前の民主党と同じように断固として与党に抵抗する場合と、「建設的野党」の立場をとる場合をうまく使い分ける必要に迫られる。そのうちテレビのコメンテーターが「自民党は内部抗争ばかり。与党・民主党のできそこないの物まね政党だ」と言い出すだろう。しかしこれは現代民主主義、とくにヨーロッパ的な2大政党制では自然なことなのだ。

 中川が総裁選に勝てば、民主党への対応はアメリカのオバマ政権に対抗する共和党のように激しく痛烈になるだろう。

 遅かれ早かれ、自民党は政権を奪い返すことになる。党の再生作業を始めるのが早ければ早いほど、その道は短くなるはずだ。とはいえ私個人としては、道のりは決して短くはないと思っているのだが。

[日本時間2009年08月31日(月)14時45分更新]

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story