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コラム
トバイアス・ハリス オブザーヴィング日本政治
財務省の先制攻撃が始まった
革命(あるいは少なくとも行財政改革)の足音が迫るなか、財務省は古典的な先制攻撃を仕掛けているようだ。民主党、自民党とも政権公約に「ムダの削減」を掲げ、政権を取れば真剣に取り組む構えだからだ。財務省は各省庁に、8月末までに自ら「予算のムダ」を洗い出すよう促すことにした。とりわけ非効率な公共事業に焦点を当てている。
財務省は明らかに、民主党政権誕生の可能性に備えていくらか譲歩の姿勢を見せようとしている。それによって少なくとも短期的には、官僚任せの予算からの脱却をうたう民主党の機先を制することができると期待している。だが、この先制攻撃は失敗に終わる可能性が高い。
民主党は、憲法上は与党に基礎を置く内閣に与えられた予算編成権を取り戻したがっている。鳩山由紀夫代表は7月、財務省の丹呉泰健事務次官に政治主導の予算編成を担う「国家戦略局」の構想を示した。丹呉は構想を称賛したが、全体には沈黙がちだったかもしれない。もっとも、小泉純一郎元首相の秘書官を務めた丹呉は、「政治主導」に対してより柔軟な可能性もある。
いずれにせよ、戦いはまだ序盤に過ぎない。8月30日の総選挙でもし民主党が政権を取れば、最後は決戦にもつれ込む可能性がある。民主党はおそらく、各省庁の自主的な予算削減だけでは満足しないだろう。だが、もし民主党が本気で予算の「総組み替え」を追求し、政治家が予算の大枠だけでなく細かな配分や使途にまで権限と責任をもつ仕組みに変えようとすれば、財務省との全面戦争に発展するだろう。
[日本時間2009年08月04日(火)17時54分更新]
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