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トバイアス・ハリス オブザーヴィング日本政治
小泉の公約果たした「中川の乱」
腰くだけ 自ら公開した自民党両院議員懇談会で反省の弁を述べた麻生首相に、批判派も沈黙した(7月21日) Issei Kato-Reuters
通常なら、政権党の透明性を損なうような判断には反対だ。だが、衆院解散の直前に行う両院議員懇談会を非公開にすると決めたときの自民党の論理は理にかなっていた。公開したとしても、メディアは単に騒ぎを煽るだけで有権者には何ら有益な情報をもたらさなかっただろう。
中川秀直・元幹事長がそれでも公開せよと要求したのは、もはや自暴自棄という他ない。密室の話し合いでは、麻生降ろしは封じられてしまう。麻生の自己批判を国民の目にさらすことが、中川に残された最後のチャンスだった。
だが中川は、離党はしないと言っている。離党して新党を立ち上げたり民主党に合流するより(最近の中川の激しい民主党批判を考えれば無理だろう)、自民党を内部から改革するのだという。
もちろん、自民党が中川の改革に関心を払うかどうかは別問題だ。河村建夫官房長官は土曜日に出演したテレビ番組で、中川と武部勤幹事長がもし党とは違う独自のマニフェストを作るなら、離党すべきだと語った。他の自民党議員は、中川は自民党が07年の参院選で大敗したときの幹事長だったのだから自重すべきだと批判した。
中川批判の意味は理解できる。今や中川は、真摯な改革派というよりサボタージュ屋に見える。麻生降ろしに失敗し、党のマニフェストにも影響力を行使できなくなった今、もし自民党に残りたいというのが本心なら中川も従順にすべきだろう。
■もめる小池百合子と野田聖子
だが、もはや手遅れだ。中川は、自民党が日本を統治できるという、最初からあるかなしかだった幻想をぶち壊した。「自民党は政権担当能力を完全に失っている」と、民主党の菅直人代表代行は言う。民主党が投票日までこのメッセージを嫌というほど繰り返すことになるのは間違いない。
一方、反麻生勢力の足並みは乱れきっている。野田聖子と小池百合子は今や、新党を作るべきか否かだけでなく、新党立ち上げのために野田が小池を誘ったかどうかでもめている。
だが改革派は、過去3年の混乱のおかげで、小泉純一郎元首相の「自民党をぶっ壊す」使命をやり遂げたのかもしれない。毎日新聞の最新の世論調査によると、麻生の支持率は、鳩山由紀夫・民主党代表の28%に対してわずか11%。政党支持率では、民主党が自民党の倍の56%となっている。
中川の乱が過去のものになれば、もう少し接戦になるかもしれない。だが、鳩山が直接関わる大きな政治資金スキャンダルでもない限り、民主党は順調に勝利に向うだろう。次の関心は、果たしてどれだけ大勝するのかだ。
[日本時間2009年07月20日(月)13時26分更新]
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