コラム

小沢一郎の辞任は民主党にとっていいことづくめ

2009年05月11日(月)17時34分

 小沢一郎はついに、己の政治生命のために戦うことに疲れたようだ。

 小沢はこの数週間、死線をさまよい続けてきた。自ら率いる民主党員から、代表を辞任するかさもなくば公設第一秘書が違法献金疑惑で起訴されていることについて明確な説明をせよと迫られた挙げ句、ついに辞任を決断した。ただし議員辞職をするつもりはなく、補正予算案の衆院審議後速やかに党の後継を選ぶ代表選挙を実施するよう呼びかけた。

 産経新聞は、小沢が今になって辞めることが民主党にどんなダメージをもたらすかについて分析した。だが全体的に見て、これで民主党が損をするとは思えない。短期的にはよくない影響もあるかもしれない。民主党執行部は、これまで小沢をかばってきたことでメディアに叩かれることになるだろう。だがそう遠くない将来、小沢の後任候補が名乗り出て、変革の党として総選挙を戦おうという民主党らしい顔が出てくれば、古い政治のイメージである小沢の顔はたちまち忘れ去られるだろう。総選挙は7月以降とみられているだけに、民主党の新指導者(下馬評では岡田克也副代表)は、選挙戦が始まるまでに小沢が残した汚点を消し去ってクリーンさを前面に出すための時間も十分にある。

 一方、自民党と公明党は小沢のスキャンダルという追い風を失った。今はまた、選挙までに経済が何とか回復の兆しを見せてくれることだけが頼りだ。小沢が辞任してしまったことで、自民党は、彼の「無責任」な政策が日米同盟と日本の安全保障を脅かす、という批判もできなくなった。
 
 民主党が小沢を長くかばいすぎた可能性は捨てきれない。だが仮に遅すぎたとしても、ずっと辞めないよりはよかっただろう。

(C) photograph by Issei Kato-Reuters

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story