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コラム
トバイアス・ハリス オブザーヴィング日本政治
それでも自民党改革派は世襲制限を実現できない
自民党の次期衆院選マニフェストに国会議員の世襲制限を盛り込むことを提案した菅義偉選対副委員長は、党内から猛烈な反発に遭った。そのことを考えれば、菅と古賀誠選挙対策委員長が7日にこの問題について協議した後、党内に前向きなムードが広がったのは驚くべき変化だ。
朝日新聞によると、伊吹文明元幹事長も、引退時点で議員に選挙区支部や資金管理団体の政治資金を党に全額寄付させるーーといったやり方での「世襲制限」を提唱している。
麻生首相が反対していることを考えると、菅と古賀の2人の同意だけで実際にマニフェストに盛り込めるかどうかは疑わしい。
それでも党内の改革派が世襲制限にこだわるのは、たとえ今回マニフェストに盛り込まれなくても、この問題が立ち消えになることはないからだ。改革派にとって、世襲制限論争は党内の主流派に対抗する唯一かつ最新の武器である。
参院議員の山本一太は、自身のブログで数回に分けて世襲制限の論拠を挙げている(→http://ichita.blog.so-net.ne.jp/2009-05-06-2)。
山本は自民党の国会議員の40%を世襲議員が占める点に何度も触れ、政治家を「ベスト&ブライテスト(よく皮肉として使われる言葉だがこの場合は違う)」で固めるべきだと主張している。彼によれば、世襲議員を優遇した結果、才能のある人材が自民党から遠ざかって行ったのだという。
山本の議論は憲法論争の点でも説得力を欠く。彼は親との同一選挙区からの立候補制限は職業選択の自由(憲法22条)に抵触しないと主張しているが、むしろ問題なのは出生などによる政治的差別を禁じた法の下の平等(憲法14条)だろう。
結局のところ山本を含む世襲制限提唱者たちは、この議論が現在いかに切迫した問題か、なぜこれを総選挙での主要な争点にすべきかを示せずにいる。
このままでは、この議論は自民党改革派の「誇大広告」だったということで終わってしまう。自分たちが政権の中枢を担えば自民党は「変化の党」になり得る、という考えを売り込むためのただの宣伝材料というわけだ。
2005年といえば大昔のように思えるが、日本の有権者はまだ郵政選挙で何が起きたかを覚えているだろう。小泉元首相と小泉チルドレンが大勝し、「抵抗勢力」を自民党からたたき出した。しかし小泉の退任後わずか数カ月で、ほとんどすべての造反組は復党した。
この4年間は、小泉が約束した「改革」からの長い後退期間だった。自民党が今回は違うと信じるに足る理由は、どこにあるのか。
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