コラム

リコール不正署名問題──立証された「ネット右翼2%説」

2021年03月01日(月)14時57分

「表現の不自由展」では、慰安婦を表現した少女像の展示も批判を浴びた(写真は2019年11月3日、アルゼンチン、ブエノスアイレス在住の韓国人コミュニティーのイベントに置かれた慰安婦像) Aleksandr_Vorobev-iStock.

立証されたネット右翼2%説

昨年(2020年)8月下旬から11月にかけて行われた愛知県知事リコール署名活動について、現時点で様々な不正の疑いが噴出しており、刑事事件として捜査されていることは既報のとおりである。

愛知県知事リコール署名活動は、「高須クリニック」の高須克弥氏を筆頭とし、河村たかし名古屋市長の他、保守界隈やネット右翼界隈から多大な応援を受けたもので、「あいちトリエンナーレ2019 表現の不自由展」における昭和天皇の写真の焼却について「日本と日本国民の心を傷つけた」などという主張を苗床としたのがリコール署名の眼目である。

私は昨年の署名運動が沸き起こった時、その主張が保守界隈やネット右翼界隈の主張の外側に浸潤しえない極端にイデオロギー的なものであると捉えたので、署名によって集まる署名数は、愛知県の有権者(約613万人)の2%程度である10万筆~12万筆程度であると予想していた。

この2%という推計は、私が永年、保守界隈やネット右翼界隈を取材・研究した結果、彼らの総数が日本全国に於いて有権者(全国の有権者は約1億人)の2%である、との試算をそのまま愛知県に援用したものである。

ところが、2020年11月の署名終了の際、集まった筆数は約43万5000筆であった。これは愛知県の前述有権者に対して約7%強であり、私の事前の予想よりも3.5倍以上多い結果である。リコール成立(住民投票発起)には約86万筆が必要であったが、この半分にしか到達しえずリコールが失敗したとはいえ、43万5000筆という数字は私にとって極めて衝撃的であり、私は昨年の11月の段階で今次署名運動について用意していた原稿を全て撤回せざるを得なくなったのである。

当然この時、集まった署名に不正があるとは夢にも思わなかったからであるが、2021年に入って約83.2%に不正があったことが明らかになり、すわ刑事事件化した。つまりは真正の署名筆は435,000-362,000=73,000筆あまりで、これは愛知県の有権者に対して約1.2%に過ぎない。

よって私が昨年の今次リコールで事前に予想した10万筆~12万筆(2%説)はやはり正しかったと言えよう。

「ネット右翼2%説」の概要

furuya20210301112501.jpg
筆者制作

私が従前から唱えていたネット右翼2%説は、従前の独自の取材や研究成果を踏まえ、基本的には2014年の衆議院議員選挙と2016年の参議院議員選挙から類推したものである。

2014年の衆議院議員選挙では、やはり保守界隈やネット右翼界隈から圧倒的・翼賛的な支持を得て登場した「次世代の党」が衆議院比例代表(地域ブロック)での得票を全て合計すると日本全国で141万5000票を得た。が、同党は小選挙区で2議席を得たにすぎず比例での得票はゼロで、党勢は激減しやがて解党に至った。この時、有権者人口は約1億人であり、これに対し「次世代の党」は約1.4%を獲得する。むろん、如何に彼らの政治的熱情が旺盛でも、全員が投票所に向かうわけではないので、投票率を考えて私はネット右翼を全国で200万人程度とし、その割合を2%としたのである。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 9
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story