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ドイツの新連立政権にあって日本にないのは国民生活へのリスペクト
結局、新政権の政策には、SPDが主張する最低賃金のアップや緑の党が主張する脱石炭エネルギーを前倒しして2030年までを努力目標とすることなどが盛り込まれたが、FDPが主張する新たな増税の禁止や財政規律の遵守も盛り込まれた。また財務相ポストもFDPが抑えている。そのため新政権は政策実行のための財源確保に苦慮することとなるだろう。基金の設立による民間資金の活用などが提案されているが、もし財源の問題によって約束した政策が実行できなかった場合、支持率の低下などの政権の不安定化を招くことになるだろう。
失業政策の改革はできるのか
新政権の目玉政策の一つに「ハルツⅣ」の改革がある。これはSPDと緑の党の連立政権であったシュレーダー政権の時代に行われた改革で、失業保障の条件を切り下げることによって就労への意欲を促すというものだった。結果として失業率は改善されたものの、就労支援よりもとにかく仕事に就かせることを優先した結果、いつまでもキャリアアップできない労働者を多数生むことになるなどの弊害もあった。弱者支援を切り詰めたことはSPDの人気低下の原因の一つとされ、党内では改革の見直しを求める声が長らくあった。
ショルツ政権は、この「ハルツⅣ」を見直し、「市民所得(Bügergeld)」の導入を行うとしている。これによって従来の制度に比べて、一人ひとりの個人の実情に配慮した生活・就労の支援が行われるというが、給付金額などについての具体的な数字は連立合意書には盛り込まれていない。それはやはり今後の財源や協議の制約を受けることになる。
試されるショルツ首相の力量
しかし、そもそも不安要素がない連立政権はない。連立政権とは妥協の産物に他ならず、どの党も完全に満足できるもではない。従って、それぞれの党は不満が蓄積した支持層を爆弾のように抱えることになる。そうした支持層を抑えられるかは、それぞれの党首の力量にかかっている。
政権が不安定化したときに、ショルツ首相がリーダーシップを発揮できるかは未知数だ。元々ショルツは首相候補としては地味だとみなされていた。CDUのラシェットが災害の被災地を視察に訪れたとき談笑していたということで批判を浴びたため、また緑の党のベアボックも政治的力量が不安視されたため、消去法的にショルツの堅実さが評価されたという経緯がある。
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