コラム

都議会選で自民党を大敗から救ってやったキミへ

2021年07月09日(金)17時54分

また都民ファースト議員には、崩壊した民主党からの移籍者も多く、連合の推薦を受けた候補者も多かったので、意外と組織的に充実していたという分析も可能だ。逆にいえば、東京都の世論調査では国政野党第一党の存在感を出せている旧民主党系本流の立憲民主党が、都や区の支持基盤を都民ファーストに奪われたため、都議選で思うように候補者を立てることができない理由であるだろう。

低投票率により組織が猛威を振るうと、何があっても地縁・血縁・利権で結びついた特定の議員に票が集まるため、直近の政治課題に対する民意に反した結果となってしまうという問題がある。

たとえば世論調査によると、オリンピックの中止や延期を求める都民は多く、調査形式によっては過半数を占めることもある。だが、その延期あるいは中止を主張して戦った立憲+共産ブロックは、確かに議席を伸ばしたものの、世論調査に見合うだけの結果は残せてはいない。

もちろん選挙だけが政治参画の手段ではない。選挙当日が悪天候であったこともあるし、コロナ禍で外出を制限していた人も多いだろう。しかし、増加するコロナ感染者数、次々と潰れていく商店、それでも開催されるオリンピックなど、切実な課題を多く抱えているにもかかわらず、それでも選挙にいかない有権者というのは深刻な問題であるといえる。

低投票率の「言い訳」

よく低投票率の問題として「既成政党への不満」があげられる。有権者に政治参画する気を起こさせない政治家が悪いというのだ。他にも、学校教育での主権者教育の不十分さやマスコミが取り上げないことなどを理由に、有権者の政治的無関心は有権者のせいではないことにされる。

だが、今よりも教育水準が低く、参政権も言論の自由も抑えられていた時代にも人は政治に向き合っていたのであって、政治的無関心の問題は有権者自身にある。低投票率の原因を政治家や教育やマスコミのせいにする言説は、ほとんどモノを考えていないような人でも簡単に何か言った気分なれるので、人気がある。しかしいつまでも低投票率の責任を外部に求めていては、今後も投票率は上がらないままだろう。

有権者とは政治的主体であって、誰かにお膳立てされることで政治参加するような存在ではない。有権者が政治家を育てるのであり、政治家や教育者やマスコミによって育てられるようでは問題があるのだ。

ただし、ただ選挙に行けばいいというものでもない。選挙に行けというメッセージを伝えようとする人は多いが、その中に「もし投票したい人がいなくて棄権するぐらいなら白票を入れよ」という人がいる。とにかく投票率をあげ、かつ無効票を入れることによって、政治家に危機感を与えることができるというのだ。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルのソマリランド国家承認、アフリカ・アラブ

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story