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東京五輪の「国際公約化」は日本政府の自作自演
増税反対論が国内に巻き起こる中で、安倍政権が行った言い訳のひとつが、消費税増税は「国際公約」だとするものだった。2011年に民主党野田政権が、G20で消費税を増税することを表明した。これによって消費税増税は「国際公約」となったのであって、日本の信用を落とさないためには消費税増税を行わなければならなかったというのだ。
しかし少し考えれば分かることだが、当時の世界で、日本の消費税が上がるかどうかを注視していた国はどれだけあったというのだろうか?基本的に租税体系をどのようなものにするかは(いわゆるタックス・ヘイブン問題などは除外するとして)各国の国内問題であって、国際社会がどうというものでもない。この場合の「国際公約」とは、正当性に乏しい政策を国内で進めるための理由付けに持ち出されているにすぎない。
野田政権は、消費税増税は「国際公約」だと主張することで、自身の不人気政策を押し通そうとした。安倍政権は、「国際公約」を理由に、止めようと思えば止められたはずの消費税増税に対する自公政権の責任を回避しようとした。大手メディアはこの詐術を強く追及しなかった。このことによって「国際公約」にしてしまえばどんな政策でも「もう決まったことだから」と従わせることができるという成功体験を与えてしまったのだ。
「国際公約」の精神論化
日本以外の国が、オリンピックの「安心・安全な形で」の開催に賛成するのは当然だ。「安心・安全」を保証しなければならないのは日本政府の義務だからだ。しかも、仮にオリンピック開催で感染者数が増えても、そのリスクを負うのは日本だけなのだ。
その反対に、もし日本政府が中止を宣言しても、オリンピックの強行開催を迫る国が出てくるとは考えにくい。そうなると、オリンピックに伴う感染者増は、その国の責任となってしまう。そのリスクをわざわざ取ってまで、オリンピック開催にこだわる国があるだろうか。
オリンピックは「国際公約」だから絶対に開催しなければならないという議論は、日本政府が勝手に約束して勝手に持ち帰ってきた自作自演にすぎない。しかしこうした自作自演の茶番劇に、専門家会議まで従わされているのだ。
オリンピックを開催できるか否かの判断は、新型コロナウイルスの感染状況という現実を踏まえて決定されるべきだ。しかし「国際公約」の物語は、「信義を守る日本人」というナショナリズム的心情を動員することによって、それを精神論へとすり替えてしまう。たとえば、日本人は「多少の(「さざ波」のような!)リスクを負ってでも」オリンピックを開催し、世界に国威を発揚するのだ、という主張が支持されてしまえば、感染者数や死亡者数がここからまた増えたとしても、それは「国際公約」を守るための「やむをえない犠牲」として処理されてしまうかもしれない。
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