コラム
東京に住む外国人によるリレーコラムTOKYO EYE
2つの歌謡祭に見る 「学ぶべき」韓国の力
今週のコラムニスト:クォン・ヨンソク
流行語大賞には漏れたが、昨年のキーワードとして「K─POP」を忘れるわけにはいかない。忘年会でも、KARAや少女時代などのコピーユニットが大いに場を盛り上げたことだろう。
ニューズウィークが「韓国をうらやむ日本人」という特集を組んでから約10年。韓流スターやK─POPアイドルのおかげで、今では当時の数十倍の人たちが韓国に好感を持っている。しかも昨年は、文化だけでなく政治、経済、スポーツにおいても「韓国に学べ」という声が上がった。
週刊東洋経済などの経済誌は相次いで韓国経済を特集。テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』は、G20開催中にソウルに特設スタジオを設け、韓国企業・文化の躍進の秘密を大特集した。
こうした特集の共通点は、韓国に勢いと強さと羨望を感じていることだ。僕の知る限り、日本が韓国を心底「強い」と認め、うらやんだのは初めてではないか。
日本人にそう思わせているものは何だろう。そのヒントを僕は意外にも、年末の同じ日、同じ時間帯に放送されていた2つの歌番組で見つけた。
1つはフジテレビの『FNS歌謡祭』。番組ではおなじみの名曲集映像が流れ、デビュー50周年の加山雄三と、25周年のTUBEの特別ライブが行われていた。50周年と25周年とは......。子供の頃に嫌というほど聞いた「君といつまでも」の途中で、僕はチャンネルをかえた。
すると、BSジャパンで『K─POP NIGHT IN JAPAN』のライブの様子が放送されているのを見つけた。セットの豪華さや音声などではFNSにかなわなかったが、勢いは明らかにK─POPに分があった。次に何が飛び出すか楽しみで目を離せないのだ。
一方、FNSは完全に同窓会モード。石井竜也の「君がいるだけで」や、和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」など往年の名曲のオンパレードだ。さらにトリで登場したのは、デビュー30周年の近藤真彦だった。
■韓国の強さを生んだ失敗の教訓
K─POPは、年功序列で平和で穏やかに暮らすJ─POP界に押し寄せた第2の黒船かもしれない。美脚と腹筋を武器に、一糸乱れぬダンスと歌唱力で見る人を圧倒するニュータイプの若者たち。外国語も堪能な彼らは、グローバル化という時代の趨勢に迅速に対応したネオ・コリアの「最高級ブランド」だ。
いま起きているのは、まさに過去とは逆の現象と言える。かつて朝鮮は、自分たちの伝統にこだわり、時代の潮流に敏感に対応できなかった。「過去志向性」ゆえに国権を失い、どん底まで落ちた。
だが今、その屈辱の歴史が強迫観念となり、是非はともかく韓国はグローバル化という世界的な荒波に迅速に対応できた。失う物などなく、過去の歴史を克服するというコンセンサスがあるから、変革の道を突き進むことができる。韓国の勢いと強さの秘密は、この決断力と推進力、そして失敗を恐れない勇気と立ち直りの早さにある。
一方、今の日本はどうか。いまだに「開国」でもめ、意思決定スピードも遅く、過去の栄光を捨てられず、どの分野でも過去の人が幅を利かせる。かつての朝鮮と今の日本がダブって見える。
昨年は、韓国併合100周年という節目の年だった。この年にK─POPブームが起こり、韓流が若者にまで浸透したことは、日韓新時代を予見させるものがある。日韓関係はこれまでが異常だったのだ。「失われた100年」を経て、今ようやく相手を対等な国として見る正常化(常態化)が始まったのだと思う。
日本とJ─POPの未来も決して暗くない。妙なプライドや優越感を捨て、K─POPのようにアジアで現地化の努力をしよう。そして、日韓のファン同士の交流イベントも開催する。それがJ─POPの再生のみならず、日韓新時代をも加速させるだろう。
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