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コラム
池田信夫エコノMIX異論正論
「民主・みんな連立政権」で政治は変わるか
夏の参院選について、いろいろな週刊誌の予想が出てきたが、民主党が過半数を大幅に割り込んで野党が多数になる「ねじれ」が起こると予想する点で一致している。問題は、民主党がどの野党と組むかである。それは選挙結果しだいだが、野党第2党がみんなの党になるという予想も一致しているので、社民党・国民新党との連立を解消しても「民みん連立政権」で過半数になる場合は、そういう組み替えが起こる可能性がある。
自民党から、みんなの党の渡辺喜美代表と政策的に近い河野太郎氏や中川秀直氏などが合流すれば、みんなの党はかなり大きな勢力になる。場合によっては、鳩山首相が退陣して渡辺氏が首相になるかもしれない。連立政権でキャスティング・ボートを握る小党の党首が首相になることは珍しくなく、日本でも自社さ連立政権で社会党(当時)の村山富市委員長が首相になった例がある。
これは今の混迷する政治状況を変えるかもしれない。社民党のために行き詰まっている沖縄の基地移転を白紙に戻し、国民新党のための郵政国営化を中止するだけでも、混乱はかなりおさまるだろう。労組出身者の影響力が強いため、極左的な方向に流れている鳩山政権のバイアスも、かなり中立に戻る可能性がある。
しかし、みんなの党の政策は、率直にいってかなりお粗末だ。最大の争点である財政については「増税の前にやるべきことがある!」として、消費税の増税や財政再建の見通しについて何もふれていないのは民主党と同じだ。財源を特別会計の「埋蔵金」で捻出するという話も民主党と同じで、こんな空想的な財政政策は、政権に入ったら破綻することは必至である。
成長戦略として「産業構造を従来型から高付加価値型へ転換。ヒト、モノといった生産要素を、予算、税制等で成長分野へシフトする」という効率化の方向を打ち出しているのはいいが、具体策となると環境・福祉など、民主党と同じような産業政策が並ぶ。「物価安定目標」(インフレ目標?)が、成長戦略の中にまぎれこんでいるのは奇妙だし、派遣労働の規制強化を打ち出しているのも民主党と同じ愚かな政策である。法人税の減税と租税特別措置の見直しを打ち出しているのが評価に値するぐらいだ。
もう一つの大きな争点である年金改革も「基礎年金部分を抜本改革」と書いてあるだけで、まったく具体策がない。基礎年金を消費税でまかなうというのが多くの経済学者の提案している(民主党もかつて提案した)案だが、そのためには消費税の引き上げが必要なので、年金改革の構想が描けないのだろう。
全体として、みんなの党の経済政策は民主党のポピュリズムと大同小異なので、よくも悪くも民みん連立政権ができる可能性は高いが、それによって経済が改善されることもあまり期待できない。ただ渡辺代表が「小さな政府」という理念を打ち出していることは、民主党のバラマキ福祉路線にブレーキをかける効果が期待できる。みんなの党が批判している子ども手当を中止するだけでも5兆円以上の歳出が減らせる。
経済政策でみる限り、民主党も自民党もみんなの党も落第だが、ほとんど0点に近い民主党と30点ぐらいのみんなの党が連立を組めば、10点ぐらいの政策にはなるかもしれない。それでも現状よりはましだ――というのが日本の悲しい政治状況である。
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