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自民党総裁選を韓国はどのように見ているか
韓国が石破氏に期待する理由
一方、韓国が期待していた人物は石破氏だ。韓国メディアでは安倍総理の辞任発表の前から石破氏についての好意的な報道が続いていた。2016年ある全国紙は「頑張れ、石破」という露骨なコラムを掲載し、それ以降も韓国マスコミは「少し変わってるが面白い人」というイメージを定着させるような報道をしてきた。今年に入ってからも日本で実施された次期総理候補の世論調査で石破氏が1位に選出されたといった報道が繰り返されていた。
韓国マスコミが石破氏について肯定的な報道に出る理由は彼が安倍政権の政策を批判したり、あるいは異見を述べたりすることについて、「安倍政権とは違う」という漠然とした期待感を抱いているからだ。韓国のマスコミは安倍政権および自民党を、躊躇することなく「極右」だと表現してきた。そしてそれは韓国国民たちに「自民党=悪」というイメージを着実に植えつける結果となった。それ故に、自民党内で主流派とは少し違う意見、批判的な意見を堂々と述べる石破氏は韓国国民の目には「右翼」ではなく「合理的な保守」と映っているのだ。
韓国内の石破氏についてのイメージは韓国マスコミの「偏向性」にも原因がある。韓国マスコミは安倍政権に批判的な日本の言論の声を重用する。特に政治記事を見ると、日本のリベラル性向の記事をそのまま翻訳し、転載しているといっても過言ではないほどだ。5年前、日韓の多くのメディアがアメリカ大統領選挙の直前まで「ヒラリー当選」を予想し報道していたことを思い出してほしい。日韓のメディアが誤った予測をしたのはアメリカの保守系マスコミの声に耳を貸すことなく、ヒラリー寄りのリベラルマスコミの見解、予測のみを偏重していたためだ。同じことが韓国における石破氏報道において起こっている。つまり韓国国民の抱く石破氏象は「韓国マスコミの選択」によって作られたものなのだ。
日本の総理というポストの「宿命」
日韓双方の国で、次期日本総理が誰になるかによって日韓関係が変化するかもしれないと期待する人々がいる。もちろん、その変化というのは悪化する可能性、今よりは好転する可能性の両方が考えられるだろう。だが私はこの意見に対しては懐疑的だ。韓国の対日観は日本の総理が 保守だろうがリベラルだろうが、韓国に対して優しいだろうが、冷たいだろうがあまり変わらない。
今の韓国人たちは1995年8月戦争と植民地支配に対し反省と謝罪を表した、いわゆる「村山談話」を発表した村山元総理を「日本の良心」と呼んでいる。韓国人が期待する言動を示してくれた人だからだ。だが彼に対するその評価も一貫したものではなかった。
談話発表から2か月後の10月、「日韓合併は合法的に行われた」という発言をしたことが韓国に知られると、手のひらを返したように「妄言総理」と断定された。当時、韓国内では連日村山氏への批判記事が相次ぎ、反日デモまで行われた。
また、 政界引退後、韓国の独立運動家追慕施設に土下座するなど親韓発言で「日本の良心的政治家」と呼ばれた鳩山元総理も同様だ。2010年総理在職時「竹島は日本の領土」という発言をすると、韓国マスコミ及び国民から「鳩山妄言」と呼ばれ嫌われた。つまり、いくら韓国が拍手をおくり歓迎した日本の総理だとしても、たったの一度でも韓国国民の逆鱗に触れるような発言をすれば妄言総理と断定され、叩かれる(ただし、村山氏、鳩山氏とも、時間の経過と共に韓国に都合のいい側面だけが記憶に残されたのか、現在は「日本の良心」の座に返り咲いている)。つまり、日本の総理が誰になったとしても、その人が永遠に口を噤んででもいない限り、あるいは口を噤んでいたとしても、韓国から大なり小なりの批判を浴びずにいることなど不可能だ。
今の韓国政府が積極的で友好的な姿勢を見せる国は中国と北朝鮮くらいだが、韓国との関係改善のためにこれらの国の仲間入りをすることを日本国民は望まないだろう。だからといって未だに「土着倭寇」(自生的な親日派)という言葉で親日派狩りが横行する韓国で、親日的なジェスチャーを示す政権が現れるとも思えない。結局、歴史的にも複雑な関係にある韓国の隣に位置し、市場経済と自由民主主義を推進する国家のリーダーであり続ける限り、韓国から叩かれるのは避けられない宿命なのだ。
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