森 今の日本の若者は中国に行きたがりません。しかし、東アジアの今後の平和を考える上では、台湾、香港、韓国、日本、中国の若い世代が実際に会って、話す機会が非常に重要です。
どうすれば日本の学生が中国に関心を持ち、中国へ行こうと思えるのか。私としては、東アジアの学生交流の促進に力を入れていきたいと思っています。
野嶋 習近平政権によって研究者としての将来、ジャーナリストとしての行動など、多くの人々の人生設計が狂ってしまいました。訪問自体に拘束や入国拒否のリスクが伴うからです。
多くの中国を研究する人が同じ思いでしょう。私たちは「友好人士」ではないかもしれませんが、中国の理解者ではあると自負する人々です。
その私たちまで遠ざけている今のままでは中国は決して得はしない、損をしていくことが多くなるという警告を伝えていくことが、今の日本の役割だと思っています。「中華」を内在化させている日本人だからこそ、その資格があるとも思っています。
岡本 一帯一路も含めて、習近平の路線は中国にとっては自然な方向に向かっているということはすでにお話ししたとおりです。まずはこのことを認識する必要があります。
しかしながら、これに対してどう折り合いをつけるかというのが、おそらく私たちと世界が突きつけられている課題だと思います。
本日はお集まりいただき、そして貴重なお話をありがとうございました。
阿南友亮(Yusuke Anami)
東北大学大学院法学研究科教授。1972年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。博士(法学)。東京米国ハーバード・イェンチン研究所客員研究員(2014〜2015)や東北大学公共政策大学院院長(2017〜2020)を歴任。専門は中国近代政治史。著書に『中国革命と軍隊』(慶應義塾大学出版会)、『シリーズ日本の安全保障5 チャイナ・リスク』(共著、岩波書店)、『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮社、サントリー学芸賞)など。
野嶋 剛(Tsuyoshi Nojima)
ジャーナリスト、大東文化大学社会学部教授。1968年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、朝日新聞社入社。シンガポール支局長、台北支局長としてアジア報道に携わる。2016年に独立し、現職。専門は台湾政治、中台関係、ジャーナリズム論。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『台湾とは何か』(ちくま新書、樫山純三賞)、『蒋介石を救った帝国軍人 台湾軍事顧問団・白団の真相』(筑摩書房)、『香港とは何か』(ちくま新書)、『新中国論 台湾・香港と習近平体制』(平凡社新書)など。
森万佑子(Mayuko Mori)
東京女子大学現代教養学部准教授。1983年生まれ。2012年ソウル大学大学院国史学科博士課程単位取得修了。2015年東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。2016年博士(学術)。博士論文は第4回松下正治記念学術賞受賞。専門は韓国・朝鮮研究、朝鮮近代史。著書に『朝鮮外交の近代』(名古屋大学出版会,第35回大平正芳記念賞)、『ソウル大学校で韓国近代史を学ぶ』(風響社)、『韓国併合』(中央公論新社)など。
岡本隆司(Takashi Okamoto)
京都府立大学文学部教授、アステイオン編集委員。1965年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。宮崎大学教育学部講師、同教育文化学部助教授を経て、現職。専門は近代アジア史。著書に『世界史序説』(筑摩書房)、『「中国」の形成』(岩波書店)、『東アジアの論理』(中央公論新社)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会)、『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』(東洋経済新報社)など。
特集:中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
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