Lin Xiu Xiu-shutterstock
※中編:「中国化」ではなく「中国式化」...中国の「大どんでん返し」をどう捉えたらいいのか? から続く。
論壇誌『アステイオン』98号の特集「中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望」をテーマに行われた、阿南友亮・東北大学教授、野嶋剛・大東文化大学教授、森万佑子・東京女子大学准教授とアステイオン編集委員の岡本隆司・京都府立大学教授による座談会より。
阿南 個人独裁から集団指導体制を経て民主化に向かうと思われた中国は、習近平体制で元に戻ってしまいました。
この胡錦濤から習近平への路線転換について、岡本先生はどのように考えられていますか。
岡本 必然だったと思っています。胡錦濤路線のほうが日本人にとっては居心地がよく、友好的です。しかし、中国の為政者や支配階級のロジックから言えば、かなり無理をしています。
ですから習近平が出てきて色々とやり出したときに、「中国的な指導者が久しぶりに出てきたな」と思いました(苦笑)。
阿南 それはどういう意味でしょうか。
岡本 要するに、中国は皇帝専制をずっとやってきたということです。600年ほどのスパンで歴史を見ると、習近平の乾隆帝的な振る舞いや心の在り方のほうが本中華的です。
胡錦濤や江沢民の時代は「普遍的価値」の価値観にも合い、西側の目から見ると普通でした。しかし、中国の為政者や指導者のロジックで言うと「普遍」ではなく、むしろ非常に特例的な時代です。
阿南 その乾隆帝の時代に世界との交易によって銀が流入したため、清朝は好景気になりました。しかし、その好景気があたかも自分の徳の産物であるかのように威張り、大英帝国を格下扱いしました。それが巡り巡ってアヘン戦争につながっていくわけです。
今の習近平は、まさにその歴史の再来です。日米欧からの借款、投資、技術支援によって中国経済は発展してきました。それにもかかわらず、今ではあたかも中国が世界経済の中心かつ基準であるかのように振舞い、他国を露骨に軽んじています。
中国をいかにしてこの「勘違いモード」から脱却させるかは、重要かつ極めて困難な課題だと思います。
岡本 現在の中国に対して、台湾の人々はどう受け止めているでしょうか。
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