ウクライナ侵攻直前に行われた世論調査では、「米国がウクライナ危機で大きな役割を果たすべき」と回答したのは民主党支持者で32パーセントだったのに対し、共和党支持者では22パーセント。
「いかなる役割も果たすべきではない」が民主党支持者で14パーセントだったのに対し、共和党支持者では22パーセント(AP-NORC poll, February 24, 2022)。
侵攻直後に行われた世論調査では、「ウクライナに米軍を派遣すべき」と回答したのは民主党支持者で50パーセントだったのに対し、共和党支持者では36パーセント(Fortune-CIVIS Analytics poll, March 8, 2022)。つまり、共和党支持者の方が消極的=内向きであることが分かる。
ソ連を「悪の帝国」と喝破したドナルド・レーガン元大統領のイメージで今日の共和党を理解すると米外交を大きく見誤ることになりかねない。イラク戦争を主導したジョージ・ブッシュ元大統領時代に隆盛した安保保守系の論壇誌『ウィークリー・スタンダード』はトランプ時代の2018年末に廃刊になっている。
一体、米政治に何が起きているのか。
厭戦ムードが漂っていることは確かだ。アフガンでは2001年の開戦から20年間で2兆ドル以上の戦費を支出し、米兵だけで約2500人が犠牲になったにもかかわらず、安定した民主国家を築くことも、タリバンを制圧することも出来なかった。
しかし、より根源的な要因として、米国における中道派(=主流派、エスタブリッシュメント)の信用失墜がある。
従来、民主党と共和党は各論をめぐる相違こそあれ、どちらも中道派が外交・安全保障政策を牽引してきた。それゆえ政権交代が起きたとしても、政策的な一貫性、少なくとも戦略的意志が継続されてきた。
ところが、オバマ時代の中盤あたりから、両党内で中道派への風当たりが強まる。民主党では「サンダース旋風」(民主社会主義)のような左派のポピュリズムが、共和党では「トランプ旋風」(自国第一主義)のような右派のポピュリズムがそれぞれ席巻し、中道派が推し進めてきた「グローバリズム」を批判した。
2つの「旋風」は移民や医療保険、税制など多くの政策課題に関して「水と油」の関係にあるが、自由貿易や対外介入に懐疑的な点など共通点も少なくない。
vol.101
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